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チラシの裏に書くようなことを徒然と。 Since 19,Feb,2007
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 フェイバリットよりいろとりどりのセカイです。
 
 
 自らの記憶を代償にあらゆる傷を治す力を持っている、鹿野上悠馬と、彼に取り付く半透明の魔法使い・二階堂真紅。彼らの目的は”恋をすること”だった。彼らと最果ての港町・風津ヶ浜にある古びた学生寮・”嵐山荘”の住人を中心に物語は展開していく。
 そして嵐山荘の地下には、色とりどりの異世界へと繋がる不思議な部屋があった。
 
 
 あらすじというか前置きとしてこんな感じでしょうか。上記からもわかるように一風変わったシナリオ設定であり、主人公やヒロインは学生ではありますが、学園生活が事細かに語られることはありません。最近食傷気味だったのが災いしてなのか、学園の生徒が中心なのに、学園生活が殆ど描写されることがないゲームが多くなってきた気もします。
 
 
 おおまかなシナリオの展開は通常のエロゲと同じく、悩みを抱えるヒロインを主人公がそれぞれ解決していく流れですね。テキストは、読み易い部類ではありますが、少し癖があり、回りくどいというか無理に文字数増やそうとしてるというか、そんな印象が残りました。無駄な倒置法、体言止めの乱用が目立ちます。
 なんというか、初期の西尾維新みたいな感じとでもいいましょうか。情緒的な印象を持たせるためなのか、難しい話してる時やシリアスなシーンで特に顕著だったと思います。好き嫌いは結構出そう。
 
 共通ルートは7~8時間。そこから各ヒロインルート2~4時間といったところでしょうか。全体的なプレイ時間はそこそこだと思いますが、ヒロインによって差がありますが個別ルートは短めですね。あとTrueルートは7~8時間程度と長めです。
 
 
 グラフィックはなかなか良好。立ち絵のレベルが高いのもさることながら、背景がなんだろうパステル調とでもいうんだろうか、写実的な綺麗さではなく、メルヘンな雰囲気を出している少しな特殊な作りになっているのが印象的でした。ともすると手抜きにも見えかねないのが珠に傷でしょうかね。作中では様々な異世界を目にすることになりますが、各々の世界の雰囲気を表現出来ていたと思います。
 
 
 BGMは無難な感じですが、個人的に作品設定や雰囲気が、昔のKey作品に近い印象を持ったせいか、音楽もどこかKey系の幻想的な雰囲気の曲をイメージしました。折戸氏よりは、だーまえサウンドっぽい感じでしたけど。





総評:7点
 


 では、シナリオ感想です。以下ネタバレ全開ですのでご注意をば。
とりあえずプレイ順のシナリオ感想です。






 

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 観波加奈
 
 空から落ちてきた少女。天然メイド。主人公に助けられた彼女は、昔同じように命を助けられた”カノウエユウマ”を探していた。当人に出会った彼女は、嵐山荘管理人・霧島時雨の厚意で、寮に住まい、学園に通うことになります。
 妖狐の白が御霊送りに会った後、彼女の様子は一変します。三度展望台から落ちた加奈を救った悠馬は、彼女の側にずっといることを誓います。そしてもう一つの心の傷を癒す力で彼女の過去を垣間見る。
 
 加奈は幼少の頃に異世界に攫われた少女だった。彼女の頭には記憶や思い出を糧に救う蟲が寄生しており、同じように異世界に攫われた子供達が残した遺物と蔵書を頼りにたった一人で生き延びていました。蟲に記憶を喰われないように、常に新しい本を読み続ける生活。観波加奈という名前も、漫画の主人公から拝借したもの。
 ある日、彼女が拠り所にしていた小屋は、人間を襲うモノ達に壊されてしまう。なんとかモノ達から逃げ出した彼女が、木の上で仮眠を取ると、いつしか元の世界に戻ってきていた。そこで再会したのが、悠馬だったのですね。
 
 
 加奈の過去を知った悠馬は、彼女の母の眠る場所に一緒に向かうことにします。そこに管理人が帰ってきて、彼ならば加奈を救えるのではないかと相談することにします。
 蟲を排除するだけならば、簡単だろうと儀式に臨みますが、加奈が寄生されていた蟲の量は管理人の予想を遥かに超えるものでした。加奈の中に戻ろうとする蟲。それを止めたのは予てから加奈のことを気にかけていた一ノ瀬あゆむ。
 
 彼は、加奈が異世界にいた時に拾った子猫であり、影で彼女の生活を守っていました。母親と同じ温もりをくれた彼女を救うために、異世界の旅路の中で人間の体を手に入れ、風津ヶ丘にやってきたのですね。そして母親から譲り受けた、たった一つだけ願いが叶う鈴の力で彼女を救う。一ノ瀬あゆむという少年がいたという記憶を代償に。
 
 頭に巣食う蟲もいなくなり、記憶を思い出した加奈は、母親の残した、様々なキレイなセカイを見るために、悠馬とともに旅をすることになります。忘れ物をして取りに帰ったリビングには、一匹の子猫がいました。加奈にしきりに何かを訴えかける子猫を飼うことにした加奈は悠馬と子猫とともに旅に出るのでした。
 
といった感じで加奈シナリオはFin。後にあるであろうTrueルートへの伏線は色々張っていた感じがしますね。神様の世界や真紅との約束、そして空にいる少女の助けを求める声、などは本ルートでは投げっぱなし。真紅は恐らく消えてしまったっぽいですしね。
 
 ただ全体的な人間関係は明らかになってきた節もあります。恐らく白は管理人の娘であろうことや、蓮の居場所を教えた式は鏡のモノだったのだろうとか。
上記の点も気になるのですが、根本的な謎として、風津ヶ浜が存在する世界の壊れた月は何を意味するのか?作中で殆ど触れられることがないため、そう見えるだけなのかと思ってたんですが、真紅が月について明確に語っていました。これはこの世界においては、あの壊れた月が当たり前であることを意味します。”こちら側”の世界でも逃がし屋という職業が成り立つぐらいですから、現実と比べると幾分物騒な世界なのかも知れません。
 
 真紅が人間だった時にいた世界も風津ヶ浜でしたが、いかにも世界の終わりが来るようなことを言ってましたし、風津ヶ浜の世界は一度終わってしまった世界なんでしょうかねえ。現時点での情報が少なすぎて、展開の予想は難しいですねw
 
 
 加奈ルート自体はイイハナシダナーでしたが、最終的に全部あゆむの功績というのが、ちょっと頂けないですかねえ。なんとか主人公の力で加奈を救って欲しかったです。CLANNADの志摩君ルートを思い出したのは私だけではないはずw
 あとは正直中盤辺りが情報が小出し過ぎてイライラしたのもありました。蟲のルール的に伝えられなかったのも分かりますが、いくらでもやりようがあっただろう、と。結局管理人や嵐山荘全員に蟲のことが伝わっちゃってるし、今まで加奈が我慢してきたのが無駄足っぽくなっちゃったんですよねえ。
 
 加奈が信じる魔法使い・悠馬が自らの力で加奈を救えたのならば、良かったんですけどね。
 
 
 
敷島鏡
 
 エロゲ大好きなおっとりダメ少女。やはり蓮を探した式は彼女のものでした。敷島家と管理人の霧島家では使う式の種類が違うみたいですね。敷島家では命ある有機体を探すのを得意としている。で、同じ名字だった白の旦那、敷島蓮也は彼女の実兄でした。関係ないはずはないとは思ってましたが、普通に本人だったとは。管理人が白の父親っぽいのに二十代に見えるところからみても、異世界では時間経過が違うみたいですね。や、まあこれは既に名言されていましたけど。御霊送りの3日が半日程度でしたからね。およそ六倍か。
 
 鏡が実家に帰っている1ヶ月間の間に一応加奈のフォローもありました。やっぱりあゆむのおかげで助かるんですけどね。
 
 最後は、ベッタベタですが、あゆむの代わりに鏡が転校生としてやってきてFin。蓮也からの宣戦布告もありましたが、彼は目が見えないのに手紙書けるのかしら。誰かに書いてもらったのかも知れませんが、非常に感情的な手紙だったんですよねえ。白と会えなくなって彼も色々あったんだろうけれど、シスコンが過ぎますねw
 
 それと、真紅はどうやら悠馬が恋をした時に消えてしまうっぽいですね。
 
 
 
東峰つかさ
 
 元気子犬系年下。いつのまにか鏡と友だちになっている。彼女がお金稼ぎに必死になっていたのは、彼女の恩人を助けるためでした。彼女もまた風津ヶ浜のセカイの人間ではなく、異世界からきた人間でした。いまのところ澪以外全員そうですが、主人公も違うところからきた可能性が高いですかね。それに風津ヶ浜のセカイは、他の世界から見ても特殊なセカイのようです。
 
 彼女のセカイは”働かなくても良いセカイ”で、そのかわりに国からの配給のみで生活しなければならないセカイ。そのセカイの中では優秀な人間のみ働いてお金をもらうことが許されており、彼女の恩人、おばあちゃんもその一人でした。
 貯金と体を投げ売って助けてくれたおばあちゃんを助けるために、出稼ぎに来たつかさ。しかし手術にかかる膨大な金額は達成出来ず、自らの身体を差し出す安い方の手術しか行えませんでした。そこに集まる商店街の人々。彼らは鏡からの連絡を受け、商店街にいつも笑顔を運んでくれたつかさのためにお金を用意してくれました。
 
 そんなわけでおばあちゃんは助かり、そしてつかさは、大好きな人々が住まう風津ヶ浜で暮らすことを決めるのでした。で、Fin。
 うーん移植手術に老人の臓器をもらうのって微妙なような気もするのですが・・・。ちとご都合主義が感じられたシナリオではありましたが、悪くはありませんでしたね。つかさが風津ヶ浜の人々に笑顔を与えていたのが報われた、っていうお話。
 
 
 如月澪
 
 ツンデレ幼馴染。
 
 ちょっと脱線します。個人的な話なんですが、私がエロゲをプレイするにあたって幼馴染キャラを気に入ることは少ないです。理由も明白で、幼馴染キャラはその属性自体に主人公への恋愛感情が既に含まれている場合が多く(それを隠してるかどうかは問わず)、また逆の主人公→幼馴染の感情もそうである場合が多いです。互いに好意を持つというステップをプレイ開始時点でクリアしてしまっている、という点がシナリオとしての面白さを損ねているからです。
 もっと単純に言うと私がボーイミーツガールが好きなだけかもしれませんね。
 
 とはいえ、昨今は幼馴染だろうが初めて会った女の子だろうが、最初から好感度MAXで始まるゲームも多いので、上述したようなことをいっても詮無いのですけどね。本作もご多分に漏れずヒロイン全員好感度MAXで始まりますので、特に澪だけ気に入らないというわけでもありませんでした。
 
 
 ということで澪シナリオ。澪はツンデレ系のテンプレ幼馴染に見えて、最初はあまり気に入らなかったのですが、個別ルートに入ったら思いの外可愛いキャラで良かったですね。いまのところヒロイン的な可愛さでは随一かも。ギャルゲーやってる時が可愛すぎてもうねw むしろあのギャルゲーやってみたいところです。
 
 で、彼女の持っていた悩みとは、なんと偽幼馴染だったことでした。簡単に言うと風津ヶ浜で悠馬が出会った澪は、嵐山荘で遊んでいた時に異世界に迷い込みました。そこは音津ヶ浜という風津ヶ浜によく似た世界。音津ヶ浜では、殺されたはずの両親と幸せに暮らすもう一人の澪の姿がありました。そんな澪に一週間だけ、身代わりになって欲しいと頼む、風津ヶ浜の澪。
 音津ヶ浜の澪はそれを承諾し、鈴に連れられ、風津ヶ浜へとやって来ました。音津ヶ浜には悠馬はいなかったため、「あなたは、誰?」と問いかけたのですね。
 
 一週間のはずの約束は破られ、澪は両親のいる元の世界に帰ることは出来なくなりました。風津ヶ浜の澪は身代わりを止める条件として、神崎とおるに復讐をすることを提示しました。
 鈴は捕まえた神崎とおるの前で、澪に答えを問います。自分が自由になるために、嘘をつけるか否か。悠馬が本当に鈴に頼んでいたことは、嘘が嫌いなのに、自身を嘘で塗り固めてしまった澪を自由にして欲しいということだったんですね。
 風津ヶ浜の澪と連絡が付き、澪は両親に会いに音津ヶ浜に戻ります。必ず悠馬の元に帰ってくることを約束して。しかし地下室の異世界へと繋がる柱時計は神崎によって壊されてしまう。
 
 月日が流れ、誰もいなくなってしまった風津ヶ浜で悠馬は澪を待ち続ける。その時、商人の町の夏祭りで手に入れたペアリングが光を放つ。悠馬の目には澪が写っていた。といった感じでFin。結構長いシナリオでしたね。エンド後は、徐々に澪が悠馬のセカイに移っていくのかな。
 
 
 
 
二階堂真紅
 
 オオトリ。金髪ツインテールの灼眼の少女。物語は誰もいなくなってしまった嵐山荘から始まります。唯一残っていた鈴から顛末を聞く。あの夏休みから5年。4年掛けて加奈、澪、つかさ、鏡を自由にした悠馬だったが、恋をすることはなかった。そして真紅のことを忘れてしまってから1年。彼は、昔のように1日しか記憶を保つことが出来なくなっていた。
 
 鈴は、真紅の日記を朗読する。それは本当はこの世界を記録したセカイそのものでした。そしてセカイの真実と悠馬の本当の記憶を語る鈴。
 
 
 ここで、本作の世界設定が明らかになりますが、結構複雑な設定であるため、ちょっとまとめたいと思います。
 
 
 神様の古書店は、願いを叶えた魂が本となって次の人生までの時間を過ごす場所。古書店には管理者が必要であり、管理者になる条件とは、願いを叶えることなく人生を全うすること。主人公は孤独に生まれ、誰にも愛されること無く死んでいった人間でした。そんな彼は、古書店の管理者として抜擢される。
 古書店は、孤独に苛まれながら暮らしている魂を救うために、寿命を全うする前に古書店に連れてくる場合があります。これが古書店としての使命なのか、管理者となった主人公が良かれと思い始めたことなのかは定かではありません。ただ、前任の管理者やあまり人間を愛していなかったようですから個人的には後者なのではないかと思っています。あくまで主人公が優しい人間だったからこその救済だったのだと。
 
 
 事の発端は、現実の風津ヶ浜があり、二階堂真紅と藍の姉妹が居て、藍の婚約者でもある本物の鹿野上悠馬が存在したセカイでした。管理者として何千、何万年と過ごしてきた主人公は、恋に情熱を捧げる一人の少女が気にかかっていた。彼女の名前は二階堂藍。彼は恋という感情を知りたいと思い、その思いは強まる一方でした。そして初めて管理者としての力を濫用してしまいます。
 
 藍を古書店に連れてきた主人公は、彼女に色々な話を聞く。特に自分の姉・真紅について多く語る彼女は、肝心の恋については微妙にはぐらかされ、彼女が次の世界へ旅立つ時にも、恋を理解することは出来なかった。
 
 
 主人公は、恋を理解するために夏目鈴を古書店に連れてきて契約を行う。彼女には彼女の大切な人を返す代わりに、古書店を管理するドアベルを奪うことを。主人公は人間の体を得て、二階堂真紅のいるセカイへと降り立つ。彼女の気を引く「鹿野上悠馬」という名を騙って。
 そのセカイで加奈や澪と触れ合い、人間としての感情を知る(思い出す)。そして管理者が不在となったことで人間の魂を乱獲するようになった古書店の力で、大切な人を失う悲しさを思い知らされる。
 
 自分の身勝手な欲望で、悲しみを生んでしまったことを悔いた主人公は、再度鈴と契約をする。自分が古書店の管理者へと戻り、加奈との約束を果たすため。そして真紅の願いである生徒達の願いを叶えるため。それを達成するために作られたのが、今までのヒロイン達の悩みを解決してきたセカイでした。悠馬と鈴が作った偽物のセカイ。そのセカイについて設定やあらすじが詳細に記述された本の名前が「いろとりどりのセカイ」だったのでした。
 
 真紅が半透明の幽霊だったのは、主人公の願いが叶わないように、そして力を使って真紅のことを忘れられるようにするための設定でした。主人公が自分の記憶が失われるのに治癒の力を濫用していたのは、本来の目的「恋をしないため」があったからなんですね。優先的に真紅に関する記憶が失われるという工夫付き。
 
 そして彼は、いろとりどりのセカイで、真紅の願いである、加奈、澪、つかさ、鏡の願いを叶え、しかし恋をすることなく人生を全うする。彼は再度、古書店へと誘われる。
 
 
 そうしてまた忙しい管理者の仕事が始まる。そんな中、「いろとりどりのセカイ」で、彼と鈴が逃し屋として助けようとした人々の魂と出会う。誰一人として助けることが出来なかった主人公でしたが、彼らは皆一様に感謝の言葉を述べる。助けようとしてくれて、ありがとうと。
 
 
 彼らの中の一人、目の前で古書店に連れて行かれたおかっぱの少女が彼に語りかける。その少女は、かつて主人公が一緒にあらすじを作り、次の世界へ送り出した二階堂藍でした。
 そして真紅を悲しいままにさせている彼を叱咤し、管理者を交代するように迫る藍。半ば強引な説得とどうしても消えることの無かった恋への焦がれから、主人公はもう一度偽物のセカイを構築することを選ぶ。真紅と恋が出来るセカイを。
 
 そのセカイに招き入れられた真紅は、セカイの様変わりに戸惑うが、藍からの手紙を受け、主人公と再会する。そしてようやく二人は結ばれ、恋を知ることが出来たのだった。で、Fin。
 
 
 以上、真紅ルートとセカイ設定をまとめてみました。各ヒロインルートで、不可思議だったことは大体明らかにされますね。セカイ設定そのものはシンプルなものの細かい設定が色々理由付けられており、それらが捲し立てるように一気に説明されるため、少々疲れます。カタルシスはあるものの、セカイ設定をもう少しシンプルに出来なかったのかなあと愚考しますね。
 恐らく、ライターさんもやり過ぎかと思ったんでしょうか、最後に鈴さんが(不自然に)現状をまとめて伝えてくれます。
 
 
 
 全ルート終えて改めて思うのは、やはりヒロイン格差。真紅は紛れもなく正ヒロインですので別格ですが、各ヒロインルートでも加奈・澪とつかさ・鏡ではシナリオ分量が違い過ぎます。これは暗に、主人公が、つかさと鏡については、真紅から伝え聞いたことしか知らないことを示しているとも言えます。
 
 あとは、根本的な作り物だった「いろとりどりのセカイ」についてどう思うかによって、評価が変わるでしょうね。予定調和とは言わないまでも、各ヒロインルートのそれぞれが抱える設定は、全て真紅のために主人公が用意したものだったわけで、それらを茶番と捉えるか本物と捉えるか、各々の解釈に委ねられます。
 個人的には、作中でも語られたように、初めは写本として作られたセカイでも、生み出された後は作者の手を離れて続いていくモノだと思うので、全くの茶番だったとは思いません。ちょっとスマガと似てるなー。

 それと主人公の罪については、やはり賛否両論でしょうね。世界中の人々が悲しみ、憎んでいた魂の乱獲の原因は主人公だったわけですから。人間の倫理観が欠落していたようなものだったのかも知れませんが、だからといって許されるわけではありません。藍が許してくれたとしても、世界中に許せない人々はいたはずですからね。もちろん主人公はその贖罪のために、もう一度管理人として生きる道を選んだわけですが、それで納得するかはユーザーの意思次第ですよね。

 
 
 個人的には、それよりも、古書店の管理人としての力があまりにも万能過ぎる方が気になりました。管理人は、その気になればセカイの始まりから終わりまでの設定を書き連ね、幸せしか存在しないセカイを構築することすら可能なのですから。
 事実、最後に主人公と藍が作ったセカイは、登場人物の年齢や、立場、関係も全て真紅にとって都合の良いように置き換えられたセカイでした。
 
 エピローグとしては、キレイでハッピーエンドで感動も出来ましたよ。しかし一つ冷静になってみると、このセカイが本当に幸せなセカイと言えるのか疑問に思います。幸せっていうのは自分の力で掴みとるもので、誰かに与えられるものじゃない、なんていう言葉をどこかで聞いたような気もしますが、そう思います。
 
 例えばこのセカイで、真紅が交通事故にあって植物人間になってしまったとする。その時きっと藍は管理人としての力で幸せなセカイを構築し直すんじゃないのかな。あの子は不幸な真紅を許せない性格ですから。そんな神様に守られた箱庭の中で、ひたすらに幸せを享受し続ける生活は、人間として生きているって言えるんだろうか。
 
 個人的には、主人公のいなくなったセカイで真紅は恋をしないまま人生を全うし、古書店で主人公と再会し二人で世界を見守り続ける、みたいな結末を予想していたので、少し拍子抜けでした。
 
 
 
 まあ文句をつけたものの、そもそも本作の世界観自体が、人間にとって過保護な程に優しすぎる設定なので、今更感が強いのですけどねw
 主人公の職権濫用が半端じゃないところを除けば、十分に感動できるお話ではありました。
 
 
 キャラ的な魅力は結構ありましたね。真紅のなんだよーと加奈のゆぅまさんという発音がなんかやけに可愛いと思うのは私だけですかねw
 澪もギャルゲーやってる時とかが最高でしたし、つかさ・鏡はシナリオは薄いものの可愛いキャラでした。あとは鈴さんも良かったですね。彼女の想いが届くセカイは見てみたいな。・・・なんだか最近、こういう主人公以外のカップルのシナリオを見たいと思うことが多い気がする。
 
 
 
 
総評
 
 ボリュームもなかなかあり、美麗なグラフィック、高水準のBGMと全体的な作品のレベルは高い。シナリオは賛否両論ですが、ハッピーエンド好きでかつ真紅好きの人にはオススメ出来ます。逆にご都合主義が嫌いな人は止めた方がいいです。テキストは少々癖というか単純にあまり上手い部類ではないので、そこが気になる人は徹底的にダメでしょう。
 
 総じて、良作ゲーと言えると思います。

 
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Comment
無題
初めまして。今日ようやくゲームを終わらして、ここを覗かせていただきました。

世界が優しすぎるという点ではまったく同じ事を考えました(笑)
ある程度成功が約束されてる訳ですからねー。

ただ、主人公に関しては僕は大好きです。何故なら主人公はあくまでも善意で神をやっている訳ですから。無理矢理に神にさせられた彼はもっと早くにすべてを放り投げてもよかったのです。そうしても、誰も文句は言えません。むしろ、彼を恨んだり文句を言ったりするのは、与えられる事を当然と思っている子供としか思えません。神を無理言ってやって頂いていた訳ですから。神をやめたいと彼が言えば、「ああ、そうか」と受け入れる他ないと思います。文句を言えるのは後を継ぐ人だけだと思います。

長々と失礼しました。
haru 2013/11/18(Mon)16:29:05 編集
Re:無題
コメントありがとうございます。
haru様は続編のいろとりどりのヒカリはプレイされましたか?コメントで仰ったような内容についても補完していたりするので、セカイが気に入った方でしたらオススメ出来ると思います。


ヒカリの感想の方でも同じようなことを記しているのですが、たしかに不幸な人生を送り、半ば無理矢理に神様という仕事をずっと押し付けられていた主人公に同情の余地はあります。しかし彼の身勝手な欲望で正式な手続きを踏まえず、古書店の管理権限を放棄してしまったがために魂の乱獲の被害者が出てしまったのは事実ですし、擁護出来ません。

彼が古書店で出会う人々に自分の苦しみを訴え神様を変わって欲しいと願い続けても、誰も引き受けてくれなかったという流れならば、全てを投げ打ってしまったのも理解出来なくはないのですが、そうしていたという描写は無かったですしね。何億もの人々との邂逅があったわけですから中には藍のような神様を引き受けてくれるような人間もいたはずだと思うんですよね。


反論のようになってしまい申し訳ないです。
何万年もの間、主人公が色々なセカイの人間が幸せになれるように仕事をしてきたのもまた事実ですので、善人であることは間違いないし、私自身も別に嫌いなわけではありません。ただ、作中で魂の乱獲に対する主人公の贖罪的なものが一切無かったのが少し気になったということです。

2013/11/21 13:30
無題
こちらこそすみません。
ただ、僕はやっぱり主人公が何故贖罪をする必要があるのかわかりません。
僕の考え方だと主人公が神になった=運が悪かった。魂の乱獲で被害が出た=運が悪かった。それで済ませてしまえる問題なのでww
現実でこのゲーム内でのようなことが起こっても運が悪かったで済ませてしまうと思います。
いろとりどりのヒカリもプレイしたいと思います。
haru 2013/11/21(Thu)22:53:46 編集
Re:無題
いえいえ、せっかくコメント頂いたのにすみません。

本来は孤独に苛まれた魂を救済の意味で古書店に誘っていたわけですが、主人公が管理を放棄したために、ちゃんと生きる希望を持った人間も被害者になってしまったという流れでした。

結局は捉え方次第になってしまうのですが、例えば藍を奪われた本物のカノウエユウマからすれば主人公は許せないでしょうし、管理放棄後は同じ問題が世界中で起きていたわけです。しかし、そもそも幸せに暮らせていたこと自体が主人公の善意に寄るものだったわけですから、文句を言われる筋合いがないという論理も通ります。

この点に関してプレイヤーがどう感じるかというのはやはり十人十色なのでしょうね。

いろとりどりのヒカリも、セカイと同じぐらいの分量があるので、中々大変だと思いますが頑張ってプレイしてみてください。
2013/11/22 12:51
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