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チラシの裏に書くようなことを徒然と。 Since 19,Feb,2007
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 お前の紅茶で世界がヤバイ。八咫烏より古色迷宮輪舞曲です。
 
 ジャンルとしてはループもの。フローチャート状に広がる世界のカケラの間を飛ぶ事ができる主人公が、自分の死の回避と狂った運命の輪を元に戻すことを目的に駆け巡るお話。作中では、事象を飛ぶ能力として表現されています。
 
 方向性としては近年ではシュタゲがやはり近いでしょうか。ただし科学的なループものではなく、どちらかというと伝奇モノに近いかも知れない。パンドラの夢とかね。
 
 
 
 本作品はシステムが特殊で、選択肢がない、自分でセーブが出来ない(オートセーブ)などの特徴があります。システムが特徴的なゲームは多々ありますが、本作品程、シナリオ設定に準拠し、上手くゲームシステムとして取り入れているものは中々ないと思います。
 
 選択肢がない、といいましたが、じゃあどうシナリオが展開するのかと言いますと、プレイヤーがある特定の機会にキーワードを投げかけることで変化していきます。ちょうどいい例が挙げられないのですが、理不尽なところも含めて、逆転裁判で証拠品を突きつける感じに近いとでもいいましょうか。あるいは、やるドラPS2シリーズのBLOODにおけるブラッドトリガー(だったかな?)にも似てますか。
 
 ヒント機能もあるし、その直前の会話で答えを言ってるようなものだったりということも多いのですが、つまりは、目の前の人物に覚えたキーワードを投げかけて、情報を得たり、主人公が自問自答する際に、答えを与えたりするわけですね。何故このような面倒なシステムになっているか、といったところもシナリオの根幹に関わっていたりで、中々楽しめます。ちなみに超難易度ゲーと言われてたりもしますが、トゥルーエンドを迎えるだけならば、そこまで難しくはないです。とりあえずヒントを見まくり、運命量が枯渇したらジャンプしてきて・・・でなんとかなります。ので、自力プレイを推奨します。普段攻略サイト頼りの私が言える台詞ではないですがw
 
 
 
 先ほど理不尽といいましたが、こういうゲームの宿命というか作り込めないところといいますか、展開を先読みし過ぎて、まだ早いキーワードを投げていたり、なんでこれで通じないんだよ!といったイライラがやはりあるのですよね。伝えられないもどかしさといいますか。まあここは逆転裁判とかで慣れっこなんで私はあまり気にならなかったです、こういうもんだよなって感じで。
 
 こんなシステムですので、久しぶりに攻略サイトに頼ること無く真っ当にエロゲをプレイすることが出来ましたw 流石にフローチャート埋めには頼りましたが、トゥルーエンドにはなんとか自力で到達。賞味15時間程度でした。いや本当に久しぶりに純粋に楽しんだ気がする。
 しかしシステム的には面白くなる要素を持ち合わせていたものの、逆転裁判的なちょうど良いバランスの問題が殆ど無かったのは残念ですね。考える間もなく分かるものか、ヒント無しには到底思いつかないような脈絡のない答えの2択が殆どを占めていたと思うのですよ。そこはもう少し上手く調節して欲しかったところです。
 
 
 
 CG・BGMは正直最近の作品としては、高レベルとは言い難い出来。これはまあ、ハードルが上がり過ぎてる現状が問題とも言えますが、キャラの立ち絵に差がありすぎだと思うんですよねえいくらなんでも。作中での扱いもさることながら、一葉と和奏は立ち絵、イベントCGともに結構酷いです。サキは立ち絵からして気合入ってるのになあw まあ重要度に比例しているのだと言われればそれまでですが。
 
 
総評:8点

 
 さて、以下壮絶なネタバレといきましょう。本作品はもちろんのこと他有名ループ作品のネタバレもあるのでご注意をば。


 

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 ADVゲームとループ作品の親和性って非常に高いと思うのですよ。選択肢で運命が分岐し、様々な結末が用意され、周回プレイが当たり前のADVゲームはシステムそのものにループ構造を持っています。恐らくどんな媒体よりも上手くループ作品の魅力を表現出来るといっていいでしょう。
 
 そして本作は、さらにシステムそのものに独創性を持たせ(キーワード式そのものは原点回帰的ですが)、かつそれをシナリオと上手く融合させている点が非常に素晴らしい。
 
 作中のキャラクターにキーワードを投げかけているのは名波行人ではなく、プレイヤー自身だった。この結末で思い出すのはやはりEver17やRemember11。世界そのものであり、自分のいる世界(ゲーム世界)とこちらの世界(現実世界)をどちらも観測出来る、古宮舞は、Ever17でいうココ。そして私達プレイヤーは彼らの世界を観測し、干渉することが出来るBW。世間的には前半3days、中盤シュタゲ、後半スマガと言われてるみたいですね。 んー後半スマガ?たしかに主人公に声がついてプレイヤーと主人公の乖離が行われたところはそれっぽい感じはしますか。
 
 行人が自分のこめかみを撃ち(フリをして)、プレイヤーと主観を切り離すシーンの演出は鳥肌ものでしたね。ループモノやEver17みたいなプレイヤー主観を利用したゲームをプレイしてなかったら本当に自分の中で名作になったのになあと思うのは野暮ですかねえw
 パクリとかそんなんじゃなく、この作品はしっかりと練りこまれ、第3視点的な結末を自然に取り入れることに成功している稀有な例ですね。
 
 凄惨な結末を何度も迎える作品ですが、根底は舞さんの愛に満ち溢れたシナリオなんですよねえ。ある一人の少女が生きたいと願った。世界そのものである彼女は本当はいけないことなのに、その少女を救いたいと思ってしまった。そしてプレイヤーが召喚されるわけですよ。彼女の思いに応えるために。
 
 
 個人的にはループモノとしての完成度もさることながら作品の雰囲気が凄く好みだったのが印象に残っています。
 
 
 
 あとはやはり最初は何が何だか分からないまま物語が進んでいくわけですが、不可解に感じた事象は大抵伏線が回収されています。舞さんに電話掛けていたのは誰?張り巡らせたテグスの罠を破ったのは誰なのか?誰もいなくなったのは何故か?木箱を回収したのは誰なのか?何の目的なのか?etc... まあ、大体オレでしたぁー!っていうオチですけどねw 
 
 BW周りの視点の設定やあくまでプレイヤーとキャラクター、主に舞さんは協力関係にあるので、どちらかというとEver17に近いのですが、銀髪でトランプ服の奇っ怪な少女をプレイヤーあるいは舞さんが観測することによって、サキという事象が確定した、なんてあたりはRemember11の犬伏景子と優希堂沙也香を思い起こすし、内容的にはこちらの方がむしろ近い気もしますね。
 この時点で、咲ではないサキが生まれてしまって、そのパラドックスを解消するために「妹のいない名波行人」がいる事象が再構築されたのでしょう。
 
 主観が行人と切り離された時点で、事象移動の力はプレイヤーに委ねられ、そこからは、行人を別の事象に飛ばす役割を担います。このため行人には常にパラドックスの危険性が生まれてしまいます。記憶の引き継ぎではないため、飛んだ先にはもう一人の行人がいる。
 
 
 いやはや、中々作りこまれた骨太な作品でした。しかしながら、過去の名作達と肩を並べるまではいかなかったかな、というのが正直な印象。なんというのかなーやっぱりカタルシスが足りないんですよ。これを求めるのは酷ってものでしょうが、ココ編級のどえらいやつを期待しちゃうんですよ。それまでが良かっただけに。
 
 こういうループものでは終始に渡り「何故ループ現象が起きたのか」という原点を探ることになるわけですが、私の読解力不足もあるのは承知の上ですが、その辺がいまいち納得いかなかったんですよね。納得というか、もうちょっとドラマティックな始まりを期待していたのかな。始まりは咲が自分の死の運命を否定して、サキという事象を生んだのが始まりなんですがその辺がねー。咲とサキが出会ってパラドックスが起きて、運命の輪に狂いが生じたのは私達が観測した通りなんですが、本当の世界の始まりには、咲が死にたくないと願ってサキを生み出した事象があったはずなんですよ。そこから見せて欲しかったかなーというのが個人的な願望です。
 
 
 あとはキャラクターの掘り下げについてはいま一歩といったところですね。こういうループモノである以上サキという正ヒロイン中心になるのはやむを得ないところですので、一葉、和奏については百歩譲ろう。問題は、一番重要である主人公とサキの関係性。たしかにループする事象の中で正に生死を共にしてきた間柄なのはわかるんですけど・・・それでも主人公が全てを犠牲にしてまでサキともう一度会うという約束を守ろうとするのは正直言ってあまり共感出来ない。私の悪い頭では思いつかないのですが、もっと主人公がサキに会いたい、会わなきゃならないという上手い理由付けが出来た気がするんですよねえ。いやまあ惚れてるからってのでもいいんですけど、それならそれで惚れる所以をもっともっと描写して欲しかったんですよね。それこそ美月の美星に対する思いぐらいに。
 兄弟愛みたいなものでもよかったと思うのですよ、初めて出会ったはずのサキという不思議な少女に対する行人の想いは、ずっと共に過ごしてきたたった一人の妹だったからこそ抱いた感情だった、みたいなね。いや実際そうだったのかも知れませんけど作中でそういう表現無かったので。
 
 後はここは考察次第なのかも知れませんが、美月が当たり前のように事象を移動する能力を持っているのはなんか背景とか説明が欲しかったなあ。舞さんと知り合った後なら、彼女の助けが入ったとも解釈出来るけど子供の頃から出来たみたいだし、よくわかんにゃいです。
 
 
 
 少し悪い点ばかり挙げていましたが、本作と比較されるだろう名作達にないものも持っているんですよ。それは古宮舞という最強の萌えキャラだ。正直最後の古色迷宮輪舞曲が無かったら良作認定止まりだったのが、このおかげで個人的に名作にしてあげたい願望が生まれました。これは一種のおまけモードであり、運命の輪を抜け出しハッピーエンドを迎えた事象で、舞さんとキーワードを投げかけることでお話出来るモードです。
 
 
 
 
以下、気持ち悪い駄文なのでスルーしてもらって結構です。
 
 
 
 これはきっとカッコつけた作品ではカットされるような事象かも知れない。プレイヤーの助力もあって、名波行人と名波咲の運命は救われた。記憶を受け継いでいたサキは消えてしまったが、十分なハッピーエンドだ。これでこの作品はお仕舞い。行人と咲はこれからイチャイチャよろしくやっていくのだろう。
 
 通常のギャルゲ、エロゲではプレイヤー=主人公という定でみんなプレイをしているし、感情移入して物語を存分に楽しむためにもそうすべきだ。故に主人公の幸福=プレイヤーの幸福だ。しかし本作では作中で、プレイヤー≠主人公とメタ的に明示しているし、主観すらも切り離されてしまっている。だからエンディング時点において行人はプレイヤーにとってはただの1キャラクターに過ぎない。もちろん愛すべき彼ら、物語のキャラクターの幸せな姿を垣間見るのはプレイヤーにとっても幸福であることには違いない。
 
 しかし違うのだ。それでは足りない。プレイヤーはプレイヤーという物語中の1キャラクターとして作中に降り立った以上、心根ではプレイヤーとしての幸福を享受したいのだ。ココがBWを愛してくれたようにプレイヤーへの愛が欲しいのだ。必死に頑張ってハッピーエンドに導いたのに、行人にサンキュー助かったぜと言われるだけで満足出来るか、いや出来ない(反語)。
 
 ここで登場するのが我らが古宮舞嬢だ。口調が変になってきたが気にしないで欲しい。彼女は唯一プレイヤーを認識出来る稀有な存在だ。そしてプレイヤーが頑張ってきたことを誰よりも知っている存在でもある。さらに、彼女にとってプレイヤーは一人の少女を救いたいという願いを叶えてくれた見えない白馬の王子さま的存在だ。故に彼女は基本的にプレイヤーにベタ惚れである。彼のためなら一人エッチも辞さないぐらいベタ惚れだ。そしてプレイヤーにとっても彼女は唯一プレイヤーをプレイヤーとして労ってくれる唯一無二の存在だ。平日の昼間、誰も訪れることのない喫茶店で、彼女と秘密の言葉を交わし、心を通じ合わせるのだ。
 
 彼女の持つ属性もまた素晴らしい。天然でおっとりしてて、ドジでポニーテールで年齢不詳という正に正統派ヒロインなスペックだ。それでいてイケメンの行人には目もくれず、ただ一途にプレイヤーのことを見てくれるのだ。
 
 
 
 私は普段あまり萌えという言葉を使うことはない。しかしあえて言おう。これが萌えだ!このシチュエーションこそが萌えだ。そしてこれこそが過去、擬似恋愛を目的としていた頃のエロゲ業界における一つの到達点といえよう。一番近いのはラブプラスだと思うが、舞さんとプレイヤーが相思相愛になる過程の重さがケタ違いなのだ。萌えとは過程を経てこそ生まれる感情であるのだ。刹那的な感情ではないのだ。
 
 テキストでは美月が舞さんに寝起きドッキリを何回も仕掛けていても、実際にその艶姿はついぞ見ることは叶わなかった。このことに絶望したプレイヤーもいることだろう。だが冷静に考えてみて欲しい。そのシーンが用意されていたとして、その姿を見るのは行人なのだ。主観を共にはしているが、自分ではない他の男なのだ。他のゲームではいざ知らず、プレイヤー≠主人公であるこのゲームではそれは致命的だ。
 
 ToLoveるの矢吹氏が述べていたが、作中でラッキースケベに遭遇するのは主人公のみということを徹底しているという。それは主人公=読者であり、ヒロインの裸を見ていいのはオレだけ、という思春期の男子の独占願望を満たすために仕組まれた策略だ。
 
 
 舞さんのサービスショットが無かったのは、プレイヤーの独占願望を満たすためだったと推察する。プレイヤーは喜ぶべきだったのだ。行人に見られなくて良かった!と。舞さんの乱れた姿を見ていいのはプレイヤーだけなのだ。行人は咲と乳繰り合っていればいいのだ。私はここまでプレイヤーの心情を考慮した本作を高く評価したい。
 
 古色迷宮輪舞曲における古色迷宮輪舞曲は、有象無象のエロゲの中でも擬似恋愛という一点において究極の逸品と言えるだろう。他に並ぶべき作品を私は知らない。
 
 
 
 
 
 
以上、気持ち悪い駄文終わり。うむ、我ながら気持ち悪いw
 
 
でも、まあ冗談半分ではありますが、本当にそう思う部分もあるんですよ。少なくとも私は古色迷宮輪舞曲で救われた。舞さんという魅力的なキャラクターに出会えて良かったと思う。サービスショット云々は好意的解釈に過ぎるとは思いますがw
 
 
 
 
 
総評
 
 荒削りなところはあるが、ループモノとしての魅力を重厚なシナリオとそれに準じ、融合させたシステムによりしっかりと表現出来ている良作。伏線回収も怠った感はなく、好印象。不満点はCG、BGMがシナリオに対し少し物足りない。また、キャラクターの掘り下げの薄さと説明不足を感じる部分があり、ここは賛否両論。
 ループ現象の根幹を為す要素は、有名な他作品で既に使っている題材が多いため、オリジナリティについては、そこまでの革新性は感じませんが、逆に言うと様々な作品の美味しいところを取ってきてるとも言えるため、それらの作品に触れたことがない人はもちろんプレイ済みの人でも、オマージュ的な楽しみ方が出来ると思います。作中では破綻せずきちんとまとめています。
 
 昨今の選択肢のみの紙芝居ゲー一択の業界に一石を投じるような意欲作であったことは評価に値すると思います。好みはあれど一度プレイして見て欲しい作品です。


 
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