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チラシの裏に書くようなことを徒然と。 Since 19,Feb,2007
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 という訳で、恋愛小説の皮を被ったミステリの傑作とも謳われるイニシエーション・ラブです。ネタバレが非常に怖い作品ですので、未読の方はご注意をば。


大学四年の僕(たっくん)が彼女(マユ)に出会ったのは代打出場の合コンの席。やがてふたりはつき合うようになり、夏休み、クリスマス、学生時代最後の年をともに過ごした。
マユのために東京の大企業を蹴って地元静岡の会社に就職したたっくん。ところがいきなり東京勤務を命じられてしまう。週末だけの長距離恋愛になってしまい、いつしかふたりに隙間が生じていって・・・。


これが本来の表紙裏に記述されているあらすじらしいです。というのも私は文庫版を読んだので、このあらすじはなかったんですよね。実はこのあらすじもミステリとしてのヒントが隠されてたりするので出来ればハードカバー本で読む方が望ましいかも。表紙にも様々な暗喩が含まれていますし。

この作品は普通に読み進めてしまうと多少の違和感はあるもののいくらでも世の中にある遠距離恋愛をテーマにした小説にしか感じず、ラストにえ?と呆気に取られて終わってしまうと思います。どういった読み方が作品を一番楽しめるかというのは、本当に難しいと思いますが、私個人としては最初からこれはミステリなんだという気概を持って、作者と勝負する感じで読んだ方が面白いかなーと愚考したり。いずれにしても賛否両論の作品であることは間違いないですね。

では以下ネタバレ。

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とりあえず、文庫版の背表紙の紹介文は止めて下さいw ネタバレしちゃいますけど、最後の2行目で全てが変わる!とか書かれるとちょっとモチベーション下がるんですよね。。。単純にミステリとしても傑作!とか書かれた方が、恋愛小説でミステリ?どういうことだろう?とモチベーションも上がるってものです。

で、簡単に言うとこのイニシエーション・ラブは時系列による叙述トリック。その内容としては、BサイドはAサイドの鈴木夕樹ではなくは鈴木辰也視点で描かれていて、時系列も直列ではなく実は同時進行の物語だったというものです。主人公の苗字がありきたりな「鈴木」であることやアダ名の強引なつけ方など叙述トリックだろうな、と思う材料はあったものの結局ネタバレまでに真相を看破ることは出来ませんでした。今にして思えばAサイドとBサイドでの細かい矛盾(ヒント)が沢山散りばめられていたのなあ。ミステリ慣れしてる方ならすぐに気付けるでしょう。しかし難易度を上げようと思えばいくらでも上げられたであろう作品なので、恐らく生粋のミステリファンよりはライトな層向けに作られた作品なのでしょうね。読了後はああ見事に負けたなあ~といった感じでした。86~87年頃を舞台としており、その頃の時事ネタも大量のヒントになってるので、この時代を経験している方はかなり有利になります。まあ結局私みたいに、感じた違和感を脳内で勝手に補完して読み進めてしまう人には難しいかも・・・?

この作品のすごいところはやはり、一度目のミスリードしたままでもまさしくイニシエーション・ラブ、「通過恋愛」というテーマで描かれており、真相を知り物語が全く違うものに変貌してもそのテーマが揺らいでいないところですかね。

最初は、恋愛に興味がなかった男(鈴木夕樹)が合コンで知り合った女性(マユ)と恋に落ち、その過程で徐々に違った人格が形成されていき、遠距離恋愛により亀裂が生じ、都会の女性へと乗り換えていく・・・という昔のトレンディドラマでありがちな話に感じます。そして「何を考えているの、辰也?」という最後から2行目の文で、男性視点から見たマユの二股計画にさま変わりします。どちらもそれぞれ、テーマの対象として夕樹のマユ→石丸さん、マユの辰也→夕樹&辰也のマユ→石丸さんと捉えることが出来、非常に巧妙な構成になっています。結局皆身の丈にあった恋人に落ち着いて良かったね、というオチ。もし最後の2行目の文がなかったらどういう評価になっていたのか気になりますねw

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