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チラシの裏に書くようなことを徒然と。 Since 19,Feb,2007
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映画版がDVD/BD化されたのもあって、映画視聴と合わせて原作小説も一気に読んでみました。せっかくなので双方比較しながら感想をば。

6つの章で語られる6つの告白。愛娘を殺された女性教師が、クラスメイトの中に犯人が居る、と告白する第1章「聖職者」。小説も映画も双方この「聖職者」が鮮烈な印象を残します。小説では、全てが女性教師・森口のセリフだけで構成されています。心理描写も情景描写も皆無で、森口がただ淡々と語っていくだけなのですが、愛娘を殺された無念、悲嘆、憎悪といった感情がひしひしと伝わってきます。映画版でも松たかこが森口役を演じていますがこれが上手い。感情を込めず、静かに語り続ける口調の中に込められた怒りみたいなものを感じます。

聖職者という短編で、評価された作品でもあったそうでそれも納得の出来ですね。


以下、原作小説・映画版双方のネタバレとなります。

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1章では森口の語る状況や証拠からクラスでは加害者の少年A,Bは周知の事実となります。キャッチコピー等から、32人のクラスから段々と犯人を絞り込んでいく作品だと思っていたのでいい意味で裏切られましたね。


2章以降は様々な人物による告白。6章以外は全てモノローグで語られます。文庫版の監督の後書きにもありましたが、この作品の肝と言えるのは告白に散りばめられた嘘、だそうです。私なんかは単純に全部真実として捉えてしまったんですけどね。というかそれぞれの告白の中で嘘をつくメリットが特に思いつかなかったというのもあります。

しかしそういう捉え方で各々の告白を見ると、たしかに明確なことなんて何もないんですよね。森口はHIV患者の夫の血液を本当に牛乳に混ぜたのか?(一応原作でも映画でも否定気味に描かれていましたが) 美月は試験液を使って血液検査を行ったのか?(これは原作のみ) 修哉は本当に美月に好意を抱いていなかったのか?そしてラストシーン。修哉の母親は本当に死んだのか?全ては主観的にしか語られず地の文でこういう事実があったとは一切描写されません。

映画版での爆破シーンは修哉が想像した都合の良い母親像だと思いますし、現実で実際に研究所が爆破されたのかは分かりません。逆に爆破シーンがあったせいでああ、これは嘘なのかな、と思いました。どちらにしても森口の修哉への復讐としては完結したと言えますが。



メリットは無くても深層心理や対面や見栄等、モノローグとしては表現出来ない、しない事柄も多くあったのでしょう。
特に少年Aである修哉は、自身を母親の才能を受け継いた天才発明家と称しており、周囲の人々を見下していました。彼が遺書として残した第5章のモノローグなんかは悉く虚勢で取り繕った物なのでしょうし。

このあたり映画版では上手くメリハリを付けていた感じがします。どちらがいいかは賛否両論でしょうが、映画版の方が捉えやすいことは確かですね。

森口は修哉の発明品を一貫して馬鹿にし続けています。これは発明品の良し悪しに関わらず、単純な修哉への憎悪の現れ。ウェルテルは一応完全に善人として描かれています。物語の主軸は森口と修哉、あとは美月にありますので、変に性根を捏ねくり回すよりは単純明快でした。ああいう人いますしねw 少年Bの姉の告白は無くなり、母親の手記に変更。この辺りは微妙ですが、物語はより簡潔にはなりますね。ただ森口の「復讐」によって憎しみの連鎖が生まれていることを明示する意味もあったと思いますので、個人的にはあった方が良かったかも。

あとは5章の修哉の遺書では映画版では自分のレゾンデートルを守るために母親の大学であったことを偽っています。こんな感じで、本来原作でどこに嘘があったのか、何が真実だったのかと考える部分をある程度示唆してくれるのが映画版「告白」だったな、という印象でした。

ラストシーンは映画版では直接対面してましたけど、森口先生足早過ぎなのは突っ込んじゃいけないのかしら・・・w ドカーンって音聞いたはずなのに。まあそれを根拠に実は研究所の爆破なんて起きてなかった、と考えるのもいいかも知れませんけど。


全体としてはどちらも惹きこまれてしまう魅力を持った作品だったと思います。しかし後味が良い作品ではないのであまり積極的に人に薦める作品ではないかも知れません。倫理観とかの問題でR-15指定なのも頷けますが、感想とかちょっと調べてみると結構中学生ぐらいの子が見たり読んだりしてるんですよねえ・・・。ベストセラーかつ話題作でしたしある程度仕方ないとは思いますがなんだか少し怖いかも。



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