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チラシの裏に書くようなことを徒然と。 Since 19,Feb,2007
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桜庭一樹著、砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないです。

GOSICKシリーズで有名ですが元々ゲームのライターさんだったみたいですね。その後ラノベ、一般文学と渡ってきた稀有な経歴の方。その出世作ともなったのがこの作品らしいです。本作自体も最初はラノベレーベルで出版された後、じわじわと人気が広がり一般文庫として再発行されたという経緯を持っています。

引き篭もりの兄を抱える複雑な家庭事情から不相応なリアリズムを持った主人公・山田なぎさ。彼女が在籍するクラスに転入生がやってきた。名前は海野藻屑。そのあり得ないような名前や田舎の少女とは違うあか抜けた外見、そして奇天烈な言動に早速色眼鏡で見られる彼女だったが、何故かクラスで唯一自分に無関心だった主人公に執着する。

粗筋としてはこんな感じ。200ページ程の薄い本なので、すぐに読めてしまいますね。

物語の内容はポップな青春小説の文体を取りながらもひたすらに暗い。そして救われないお話です。とても万人にお勧め出来る作品ではない・・・のですが何故か多くの人に読んでもらいたいと思ってしまう不思議な作品です。




以下完全にネタバレ。


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最初の読了後にはどうしようもない虚無感に苛まれました。そして多くの人に評価されているこの作品のどこに魅力があるのか分からなかったんですよね。こんなのただの救われない話じゃないか、と。

物語の冒頭で藻屑はバラバラ死体として発見されます。その犯人は誰なのか?本当に藻屑が死んだのか? 最近ミステリばかり読んでいるせいか、どうしてもそういう思考で読み進めていました。何かすごいどんでん返しがあるんじゃないか?それはやはり幸せな結末を心のどこかで自然に求めていたからなんだと思います。しかし、冒頭の事実が覆されることはない。藻屑は死んでしまうし、父親が会心するわけでもない。兄は神の視点を失い、主人公の周りの砂糖菓子の弾丸を撃つ人間は誰もいなくなる。世はすべてこともなし。読み終わったときにようやく気付く、ああ、これって悲劇の作品なのか、と。

巻末の辻原氏の解説でギリシャ悲劇・オイディプス王の物語が挙げられています。氏の言うように本作は正にそれと同じ楽しみ方をする作品なんですね。私はそういった作品に今まで触れたことがなかったので呆気に取られてしまいました。

それを踏まえ、「悲劇」であることを念頭に置き、再度本を手にとってみると涙が止まらない。「好きって絶望だよね」そう言って砂糖菓子の弾丸を撃ち続ける藻屑の姿に心を揺さぶられる。最初は拒絶しながらもいつしかその弾丸に撃ち抜かれた主人公に共感する。藻屑の真の姿を垣間見てなんとか救ってあげたい、そう思いながらも救われない事を知っている。

なんとなく漫画・ブラックラグーンの双子編の結末を思い出しました。誰かがほんの少しだけ優しかったなら、こんな結末にはならなかったのかもしれない。でもそうはならなかった。担任教師のように懸命に救いの手を伸ばしている大人がいても、決して砂糖菓子の弾丸は大人に届くことはない。

嵐が来ると言っていた藻屑は自分が父親に殺されるのがわかっていたんでしょうね。虚実にまみれた彼女はしかしなぎさの提案に初めて笑顔を返す。多分、それは彼女の最後の実弾。その姿はたまらなく愛しくて故に悲しい。

結局読み直した後も残ったのは虚無感でした。でもなんだかよく分からないものから、悲劇的な結末を迎える彼女の生きる姿に対しての虚無感へと明確になった感じはしました。

うーん文才がないのでどう表現していいかわからないのですが、物凄く心に残った作品であったのは間違いないです。どんな印象を抱くにせよ一度は読んで欲しい本ですね。

「こんな人生、ほんとじゃないんだ」
「きっと全部、誰かの嘘なんだ。だから平気。きっと全部、悪い嘘」





以下脱線。





Yahoo知恵袋か何かに投稿されていたものだったと思うのですが、「小説は何のために読むのですか?」という質問がありました。投稿者曰く、作者の言いたいことを理解するだけのために数時間を消費するのか。話に乗り遅れないためならあらすじだけネットで調べればいいのではないか。ヒマ潰しにしかならないのではないか。

なるほど、言ってることは確かにそうですよね。究極的に言ってしまえばヒマ潰しなんでしょう。実際私の友人にも作品のあらすじだけ知って満足する人が何人かいます。時間は有限ですし、その選択が誤りだとは思いません。しかし、例えばこの「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」のあらすじを抜き出してみます。父親に虐待されている現実逃避している女の子が殺されてしまった。200Pの短編ですし、極簡潔に言ってしまえばこれだけのことです。まあ流石に足りないとは思いますが少し装飾したところで伝わるものはそう変わらないでしょう。なぎさや藻屑が生きているその姿を追わずして、共感せずして果たしてこの作品の魅力が理解出来るのか?カタルシスが生まれるのか?答えは否です。

あらすじだけでも魅力的な作品はもちろん数多く存在しますし、あらすじを知ってしまうと面白さが損なわれるものもあるでしょうが、本当の感動って結局ちゃんと読んだ人にしか訪れないんじゃないかと思うんですよね。歴史の教科書見てても新選組を好きにならないように。小説やらの物語の中で彼らの信念や生き様に触れるからこその感動じゃないですか。こんなの何らかの物語に触れたことがある人なら当たり前のことではあるんですけどね。というか普通に生きていて物語に一度も触れたことがない人なんてほぼいないでしょう。故に「あらすじだけ知って満足」してしまう人がいるのが悲しいというかもったいないなあと思うんですよね。

作者の言いたいこと、なんかは論外。メッセージなんてものは読者が勝手に感じ取るもので作者から提示されるものではないと思います。そういうのは作者の個性とか感性から作品に自然と染み付いているもので、作者がよし、この作品はこの教訓をテーマにしよう!という作り方で創作してるとは思えません。そういう作り方の方もいるのかもしれませんが、よほど客観的な視点を持ってない限り不自然で説教臭くて魅力のない作品になるだろうことは予想出来ます。


うーん何が言いたいんだかよくわからない文章になってしまいましたが、多分ただの愚痴ですw
お目汚しをば。

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