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チラシの裏に書くようなことを徒然と。 Since 19,Feb,2007
道尾秀介著のラットマンです。


「このミス」にも名を連ねる作家さんですが、この作品を選んだ理由はなんとなくだった気がします。タイトルからどのような物語なのか全く想像出来なかったのが逆に興味を沸かせたのかも知れません。

で、このタイトル・ラットマンですが、これは一種の騙し絵のことを指しています。老若男女の顔と並べるとおじさんの顔に見え、犬などの動物の絵と並べるとねずみに見えるという錯視を利用したものですね。作中でも説明がありますが、この現象を引き起こす「合理化」という心理的な作用が本作の全てといっても過言ではありません。


主人公の姫川亮はアマチュアバンド「sundowner」のギタリスト。同級生と14年間続けてきたバンドだが、ドラマーだけは恋人のひかりからその妹の桂に2年前に交代していた。幼い頃に父と姉を亡くした過去を持つ姫川は心に陰を残したままだった。そんな中、ひかりが死んでしまう事故が起きる。本当に事故なのか、それとも事件なのか。そしてその事故をきっかけとして姫川の過去の真実が明らかになっていく。


といった感じのあらすじでしょうか。

内容は一応ミステリに属するのでしょうが、一般的な殺人事件が起こってアリバイのトリックを破って真犯人を捕まえるといったようなものではありません。人間の心理を匠に操り、読者からは真実が二転三転しているように見えるという、独特なスタイルです。ここは好みの分かれるところだとは思いますが、こういった作風もあるのだという意味でも一読する価値がある作品だと思いました。もちろん個人的には読んでいて非常に楽しめた作品ですし。




以下はネタバレになりますのでご注意を。


人は自分の見たいものを見るっていう言葉がありますが、本作のトリックは正にそう。ラットマンの絵も周りに人の顔があるのだから、これも人の顔に違いない。周りに動物の絵があるのだからこれも動物の絵に違いない。こういう現象は日常の中にも沢山転がっているんですよね。空耳アワーなんかもそういうシチュエーションの動画を用意して字幕で表示させることで本当にそれっぽく聞こえるわけですしw

本作では登場人物達の勘違いと思い込みによって事件が複雑になっています。姫川は桂がひかりを殺したものと思い込み、桂は姫川がひかりを殺したと思い込み、野際はメンバーの誰かが自分を庇ってくれたのだと思い込み・・・。さらに姫川の過去の事件はそもそも姉は本当に事故で死んでしまい、父は母を庇い、姫川は母を疑っていた。その悲しい程の勘違いは二十三年の年月を経てようやく姫川の心を穏やかにする。


それぞれが自己中心的に物事を考えたためにこんな複雑な事件となってしまったわけですね。姫川は桂が自分のために殺人を犯したものと勘違いし、桂もまた同じように勘違いした。それはお互いを想う愛情あっての悲しいすれ違いでした。野際氏は正直しょうもない理由ではありますが、彼の事情を考えれば納得出来ないわけでもない・・・かな?w 姫川の父も今後の姫川の事を思ってしたことですしね。

読者的には姫川→桂→野際と真犯人が移り変わっていったように感じる展開でした。ラストは少しやるせない感じで、読了感はあまりいいものではありません。ただ、個人的に予想していたものよりは幾分マシな真相でしたので、その点は良かったです。姫川の姉を父親が凌辱していたとかひかりのお腹の子は一度会ったというひかりの父親の子だとかもっと陰惨な真実を想像していましたので。

あとは被害者のひかりのキャラが全然見えてこなかったのが少し残念でしたかね。姫川の恋人という重要な役の割に性格はおろか殆ど喋る機会すら与えられず、殺されてしまいましたし。あとからひかりが桂へのあてつけに行為の一部始終を語って聞かせたとか言われてもギャップを感じることもなく、あーそういうキャラだっけ?としか感じませんでした。
姫川も桂もなんだか自分の事しか考えてなくてあまり好きになれなかったんですが、バンドメンバーの竹内と谷尾はすごく良い奴でしたね。陰鬱な雰囲気の漂う本作の良い清涼剤。


どんでん返しのどんでん返しとトリック自体は非常に楽しめたので、オススメ出来る作品です。少し変わったミステリを楽しみたい方は是非。

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