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チラシの裏に書くようなことを徒然と。 Since 19,Feb,2007
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コツコツと読み続けて、ようやく完読出来ました。

 色々と話題に登ることが多かった作品なので、いつか読破したいと思っていた作品でした。きっかけはやはり漫画版の評判と村正関連で耳にしたことですかね。いまさら私がどうこう云うつもりはないのですが、漫画版(5巻にて未完のまま完結)は以前に既読済みであり、その内容から装甲悪鬼村正と類似するような点が見られなかったため、どのへんが糾弾されたんだろうなーと興味が湧いたのが大きかったんですよね。
 もちろん漫画版の圧倒的な面白さによって、この後の展開が知りたいと思ったのも理由の一つです。


 というわけで、佐藤大輔氏の皇国の守護者です。現在1~9巻まで出ており、一応未完となっていますが、9巻が出たのが8年前であり、内容的にも一区切り付いているので完結といってもいいのかもしれません。


 世界設定は、人と龍が共存するファンタジーの世界で、人類の文明レベルは明治初期。現実のユーラシア大陸と日本をモデルにしたような、帝国と皇国の戦争を描いた物語です。日露戦争をファンタジー世界に置き換えた架空戦記物というのが一番イメージしやすいかも知れません。
 帝国が皇国領の北領(日本での北海道)に侵攻してくるところから物語は始まります。

 主人公は、皇国の陸軍中尉である新城直衛。背は低く、顔は凶相だが、天才的な軍略を持って帝国と渡り合います。豪胆でありながら小心、冷酷で優しいと矛盾を孕んだ複雑な性格の持ち主。時に鬼畜に過ぎる所業に手を染めたり部下への冷酷なる処断と、決して正しいだけの人間では無いものの、その行動の裏には、常に部下を無駄死にさせないという思いがあるため好印象を抱ける人物です。

 本作は、新城の他にも魅力的な人物が山ほど出てきますが、多面性を持つ人物が多いのも特徴ですね。本来人間なんてものは、一つの面だけで全てを語れるほど単純ではないということなのかも知れません。例えば、こういった戦記モノにおける無能な上司の典型といってもいい守原英康なども、守原家の存続という面から見れば彼ほど行動的な人物はいなかったでしょうし、「義挙」側で最も新城を危険視していたのは彼だったりします。


 氏の作品を小説として読んだのは初めてなのですが、非常に面白く読めました。よく漫画版だけ読めばいいなんて揶揄される作品ですが、漫画だけでは説明しきれないような、細かな状況描写や心理描写、軍略・戦術の解説なども多いため、読まないのは勿体無いです。なにより漫画版は原作小説の2巻で終わってしまっています。とは言え、漫画版ならではの迫力や、悲壮感も捨てがたいため、つまりは最後までコミカライズして欲しかったなあということなんですけどね。六芒郭城塞戦は是が非でも漫画で見たかったところです。

 以下ネタバレもありますのでご注意をば。


   



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 上手いな、と思うのが龍や現在では絶滅してしまったサーベルタイガー、導術などが存在するファンタジー世界にも関わらず圧倒的なリアリティを持って戦争を描いているところですね。リアリティのあるファンタジー世界の描写のお手本といってもいいぐらい。結局どんな特殊な技術があってもそれを最も早く効果的に利用するのは軍事なんだなというのを痛感します。龍は戦闘機、サーベルタイガーは・・・戦車かな?、導術は無線通信と現実の世界の技術に置き換えることが出来ますね。逆に言うと魔法や超能力で、軍隊を一掃!なんていう派手な展開は一切無いので、ファンタジーとしてのケレン味に欠けるという点は否めません。しかし小説という媒体では派手さというのは中々表現し辛いと思いますし、私個人としては、現実にない技術を使った戦争とはどう表現されるのか?という部分に興味があったのでむしろ良かったですね。

 また、戦記モノとしてありがちな、圧倒的な兵力差を軍略によって逆転する、という展開はしばしば敵側陣営の無能さを露呈するだけに終わってしまうことが多いのですが、本作では、敵である帝国が兵力差もさることながら、速さを重視した騎馬戦術による軍隊としての強さと指揮官に帝国きっての軍略家であるユーリア(しかも超美人)を据えているという非の打ち所の無い布陣のため、新城の軍略を持ってすら全滅を免れるのが精一杯といったところ。敵国を貶めること無く、皇国の悲壮な抗戦を描いているところにリアリティを感じました。
 まあ、完璧に見えた帝国軍も、その特性故の兵站問題や国内の導術撲滅運動によって軍事的に導術を取り入れていないという欠点もあり、そこを付くことでなんとか目的を達していったわけですけどね。


 その後、龍口湾戦線の後、六芒郭城塞戦を戦い抜き、新城は本人の意思とは裏腹に英雄への道を突き進みます。そして虎城防衛戦では、初めて帝国との戦いに勝利し、帝国軍の冬季侵攻を防ぐ活躍をする。そんな新城は先の大戦で苦汁を舐めた守原を始めとした者達に恨みを買ってしまう。守原英康や、幼少時からの因縁を持つ佐脇、守原家に忠義を持つ優秀な軍略家、草波。一方で新城の味方となるものも多く、義兄で駒城家の次期当主でもある駒城保胤を始め、軍事学校での同期生達や、北領で貸しを作った水軍の笹島などが新城に助力します。
 彼らの思惑がそれぞれ錯綜し、やがて皇都内乱へと向かっていきます。結果としてクーデターは失敗に終わり、新城は皇主と皇都を守った英雄としてさらなる栄誉を与えられる。その一方で新城は、騒乱の最中、佐脇の手により最愛の義姉・蓮乃を失ってしまう。


 話の流れはこんな感じですが、新城の傍らには個人副官の冴香、六芒城塞戦で救ったユーリアが愛人として存在し、蓮乃や麗子を交えた穏やかな日常が合間で描写されます。特に最終巻である9巻では、新城の根源について語られ、蓮乃との本当の関係も明かされます。ここは驚いたと同時に、ああ、これか・・・と思いました。

 新城と蓮乃は、一時期の間だけ恋人として過ごし、それで出来たのが麗子である可能性があった。いや、物語でこういう場合は間違いなく麗子は新城の実の娘だったわけですね。そして彼の本当の願いは、駒城に拾われることなく、蓮乃と貧しくも穏やかな生活を送ることにあったことがわかります。そして自分が周りの人間、冴香とユーリア、同期生、部下、そして未来の妻であり愛娘でもある麗子すら利用している屑なのだということを自覚する。自己嫌悪に歪んだ新城の口元を見た部下達は、彼が英雄たらんとしているのだと誤解し、昂揚します。
 

 この後、民衆は皇国に属するもの全てが近衛であるという新城の打ち出した理念の元に変わっていき、皇国は強国として生まれ変わっていくのだと思いますが、物語はここで完結。
 いやーたしかに、帝国との戦争の結末まで見たかった、というのはわかります。笹島と水軍なんて最後まであまり活躍しなかったし、カミンスキィもあれで終わりではあまりにも小物過ぎる。世界設定として何故皇国にしか天龍が存在しないのか、などの謎も残っています。しかし消化不良な点はいくつもありますが、新城直衛という男の生きる道が確定してしまった、という意味ではこの結末でもやむを得ないのかなと思いました。むしろこれ以上面白いものは期待出来ないんじゃないか、という印象ですかね。

 まあ1巻冒頭の麗子の手紙から想像するに、皇国は守られ、世界最強と謳われる龍軍を有する列強国の一つとして存在し続けたようですから帝国の脅威は退けられたと見ていいでしょう。

 

 というわけで皇国の守護者。ハード架空戦記ものとしては傑作だと思いますので、オススメです。またこういったものが苦手な方も漫画版を読んでみると全体のイメージが掴めて、理解し易くなりますので、漫画版から入るのもありだと思います。
 

 



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