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チラシの裏に書くようなことを徒然と。 Since 19,Feb,2007
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 同人サークル、ノベクタクルよりファタモルガーナの館です。例によって、その存在を知ったのは某有名批評サイトから。月姫やひぐらしの時にも同じようなことを言ってきた気がしますが、本作に関しては本当に今までの同人ゲームという常識から完全に逸脱したクオリティの作品でした。音声なしという点はあるものの、これほどの完成度を持った作品自体商業ですらそうそうあるものではありません。
 
 と、同時に残念ながらこういった方向性の作品は、商業では作れない、作りにくいのだろうなとも思いました。同人ならでは、とまでは言いませんが、会社であるが故の売り上げだとか、あるべき方向性だとか、スケジュールだとかのしがらみに囚われず、納得の行く作品作りが出来る環境なんてありませんからね。
 
 もちろん本作の出来はスタッフの尽力に寄るものであることは疑いようもありませんが、拘りというか、クリエイターとしての矜持といったものを昨今の商業作品よりも強く感じたんですよね。




総評:9点
 

 

 さて、曖昧なことばかり言っていても始まらないので、各要素の印象。

 あらすじとしては、自分がなんなのかも分からないまま、西洋の館を訪れた「あなた」。館の女中は「あなた」を旦那様と呼び、記憶を取り戻す助けとなるよう、館で起きた4つの悲劇の物語の扉を開く。その悲劇を目にした「あなた」はどういう判断をするのか、といった感じ。
 
 不気味な洋館で語られる悲劇は、鬱々としていて悲しい結末を迎えるものばかりですが、どれも真実が隠されていて、飽きること無く楽しめると思います。一篇の話も2時間~3時間程度で完結するため、テンポもいいですね。
 全体的なプレイ時間は20時間前後。どこで情報を見誤ったのか、当初10時間程度だ、という認識でプレイしていたので予想を超える長さと展開に驚いていました。まあ良い方向に働いたので、よかったんですけどね。個人的にはこれこそノベルゲームの醍醐味だと思う。


 まず何を置いても、そのクオリティに驚くであろう音楽。スタッフが自信を持って売りとしている理由もわかります。西洋洋館に漂う耽美的であったり、不気味であったり、一転して華やかであったりという雰囲気を惜しみなく演出しています。ボーカル曲も数多く、言語はポルトガル語だそうですが、世界観の構築とシーンの盛り上げに一役買っていましたね。さらに作中での劇的な使い方も評価出来ます。1ループが長い曲等は、意図してかしないでかはともかく、テキストを進める度に移りゆく展開や暴かれていく真実と同調するかのように曲調が激しくなる、など、とにかく音楽への印象がすごく強いですね。

 
 次にグラフィック。絵柄は、昨今の流行りとは真逆といってもいい耽美系のデザイン。月下の夜想曲以降の悪魔城ドラキュラシリーズや、ロマサガなどを彷彿とさせるものでしたが、作品の雰囲気にとてもマッチしていました。好き嫌いはあるでしょうが、立ち絵や、イベントCG共に、音楽同様同人という枠を逸脱したクオリティでした。惜しむらくはプレイ時間に比べると一枚絵のイベントCGは少ないこと、だったのですが、プレイ中はそんな感覚を抱くことがなかったことを考えると、それだけ作中の情景描写が上手かったのでしょうね。




 それでは以下シナリオのネタバレとなりますので、ご注意をば。
特に本作は、人の思いのすれ違いによる誤解や館に纏わる謎がとても重要な要素になりますので、台無しになってしまいます。










 


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 とりあえず称賛から入りますが、いやー感服しました!悲劇の先の真実。その先にはまたしても悲劇。幾度と無く塗り替えられる真実。そして起こった事実と、そこに秘められた真相。意味深な描写には全て意味があり、伏線回収が抜群に上手く、不自然さがありません。最終章の全てが明らかになっていくカタルシスも良かった。

 全編欝展開で突っ走るので、耐性が低い人は辛いでしょうが、テキストが良質で、登場人物も人間臭い弱みを抱えているものばかりなので退屈しません。一つ一つの物語に全て衝撃の事実が待っていて、先を読みたくなる魅力もありますし。


 そんな中、ミシェルとジゼルが心を通わせた後のシーンが清涼剤となってすごく心地よかったんですよね。 最初はジゼルの救いとなったのがミシェルだ、というシンプルな話だと思っていたんですが、ミシェルもまた同様に、いやむしろジゼル以上に救われていたのだ、という展開がすごく琴線に触れました。ジゼルに必要以上に辛辣な態度を取ったりで、いけ好かなかったミシェルの行動も、あの過去を見せられたら文句なんて言えませんよ。そして彼の過去を知った後、ミシェルの視点でのジゼルと過ごした時間は涙無しには見られません。素っ気無い顔してこんなにも救われていたのかよ、この野郎。




 この物語は、モルガーナの自分を苦しめた3人の男への復讐心から始まっています。こういう話のオチとしてありがちなのが、実は苦しめる気なんてなかった、裏切るつもりはなかった、やむを得ない事情があった等の理由で、被害者の復讐が正当なものでなかった、みたいな落とし所だと思います。本作もそういった部分は少なからずあります。というかそういう部分がなく、3人が本当に救いようのない外道だったのならば、モルガーナは憎しみに囚われたまま救われなかったでしょうから、オチが着きませんしね。
 それでも単純に誰も悪くなかった、という話にせず、メルは踏み出せなかった臆病な心、ユキマサは抑制出来なかった獣性、ヤコポは後戻り出来なかった弱い心、とそれぞれ罪を背負いモルガーナに対し贖罪をしました。そしてモルガーナは許すことはせず、けれどもこれ以上の苦しみを与えることは止め、彼らの魂を解放する。この結末に落とし込んだのはなんというか説得力があるというか、納得の行く展開でした。どちらに振り切っていてもご都合主義を感じてしまったでしょうから、こういった灰色の結末は個人的に好みな類でしたね。

 ユキマサは作中でも特殊なキャラ付けがされており、モルガーナも彼に対しては割とさっぱりしていた印象でした。むしろ怖がっていましたしね。善悪の倫理を超えた獣性を抱えた彼は、なんかもう責めても仕方ない気持ちにさせられます。ポーリーンと共に普通の人間として生きることが彼にとっては、辛い人生であり、それこそがモルガーナへの贖罪となるのでしょう。




 しかし1~3章が、そのままモルガーナの時代での過ちと同じ展開をなぞっているのが、見事な構成ですよね。1章では、ネリーの気持ちを考えず、自らのエゴで行動した過ち。2章では、自分の最初の鎖だった女性を殺してしまった過ち。ポーリーンの立場が逆転しているのが皮肉です。3章では、愛する女性を幽閉し、解放する期限を設けてしまった過ち。これらはモルガーナの呪いに導かれた部分もあったのでしょうが、ミシェルの言うように彼らの心次第で変えられたはずの結末です。
 
 そういう意味ではモルガーナの呪いというのは彼らを不幸にすることではなく、縁深い者を同じ時代に転生させる、ということまでしか影響してなかったのかもしれませんよね。いや、もっというと、同じ時代に転生したのは彼らの願望に過ぎず、悲劇も彼らの魂の性質故の必然であり、モルガーナは館で彼らを傍観するだけの存在だったのかもしれません。
 それどころか、彼女の一部でもある白い髪の少女は巻き込まれて悲劇を迎えるわけで、なんだかいたたまれなくなってきました。


 それとモルガーナが本当に聖女だったのか否か、ですが、私は聖女だったんだと思います。血ではなく、その声が。なにせユキマサの獣性すら一言で抑えこむ魔性の声の持ち主ですから、生まれた村での聖女扱いも声に寄る部分が大きかったんだと思います。そしてそれこそが悲劇の始まりだったわけです。






 こんな感じで、内容に殆ど不満はなかった作品なのですが、強いて言うなら大半の人が感じているであろう、白い髪の少女の救済とエメへの因果報応が欲しかったところですかねw 前者はスタッフ自らが言っていた、ユーザーの意識とシンクロさせた刺し貫くの選択肢の工夫から判るように、どう足掻いても救えないものもあるのだ、ということで仕方ないにしてもエメは本当になんとかして欲しかったですねえ。ミシェルが彼女を恨まないのは重要なテーマですし良いにしても、せめて、あっさりと事故死するぐらいは欲しかった。まあエメみたいな人間が人生を謳歌する、というのもリアルなのかもしれませんね。


 個人的な願望としては、白い髪の少女は、人としての魂の姿を失い、館の消滅に伴いモルガーナの魂へと回帰したんだと思っているので、来世でツンデレ馬鹿野郎がモルガーナを幸せにしてやれるのなら彼女も救われるのかな、と思っています。そもそも厳密な多重人格というわけではなく、聖女としてモルガーナが持っていた善性だけを切り離した彼女そのものだったわけですしね。まあモルガーナも白い髪の少女もミシェルに惚れ込んじゃっているので、ヤコポは苦労しそうな感じ。ざまあ。




 本編クリア後の舞台裏に関しては、作中で注意喚起しているように、賛美両論なところはあるのでしょうが、個人的には非常に楽しめました。救われた、といった方がいいかも。ヤコポをツンデレ馬鹿野郎とバッサリ切ったモルガーナは、不謹慎ですが活き活きとしてましたねw いやもう本当にヤコポを一言で表している見事なアダ名です。もう本当に馬鹿野郎だよアイツは。


 しかし同時に一番感情移入出来るのもヤコポだったんですよね。最終章以降のミシェルやジゼルは、モルガーナを救うヒーローとしては文句なくカッコ良かったのですが、あまりにも眩しすぎて劣等感に苛まれるような感覚に陥ります。もちろんそこに至るまでの悲劇や挫折は感情移入出来ましたけど。


 モルガーナのために得たはずの力に囚われ、愛する彼女自身を追い詰めたヤコポ。片腕を切り落とされた彼女と対面した彼の心情は筆舌に尽くし難いものがあったでしょう。
 ベクトルは違うんですけど、コードギアスのルルーシュが全てナナリーのために起こした行動が、結果として世界のしがらみに囚われ、彼女の敵、引いては世界の敵となって憎しみの標的としての死を選んだ展開を思い出しました。

 もちろんミシェルのいったように、すぐに誤解を解けば良かったのかもしれない。そうすれば最悪の結末だけは回避できたでしょう。しかしヤコポと同じ立場に立った時、果たしてそれを実行出来るか、といったらはっきりいって私は自信ないですよ。仮面をかぶってきた人生の中、サバトを開いた前領主としてではなくヤコポという1人の青年として、モルガーナの憎しみの怨嗟を受けるのは何よりも耐え難いはず。老婆なら犠牲にしても良いと考えた自分の非道を曝け出すのも怖かったでしょう。かつて広い世界を見せてあげるといった青年が、狭い世界に縛られている哀れな男に成り下がっている姿も見せたくなかったでしょう。
 来世での白い髪の娘との結末も含め、本作中でダントツのダメ男である彼ですが、一番人間らしい弱みと悩み、葛藤を見せてくれた魅力的なキャラクターでもありました。だから称賛を込めて彼を呼ぼう。ツンデレ馬鹿野郎と。


 
 主人公の認識すら何度もすり替わる、特殊な構造の作品ですが、終盤はちゃんと主人公としての役目を果たしていたミシェルは良かったですね。最終章のミシェルのキャラは結構お茶目だし面白い。彼自身も普通の人間として人々と関われたことに、喜びを覚えていましたし、真相の解明とモルガーナの救済という目的があったにせよ、最終章の雰囲気は非常に心地良かった。困難はあるにせよ、このミシェルならきっとモルガーナを救えるだろうな、と思わせるくらい主人公してましたよ。や、まあ選択肢間違えると速攻で殺されますけどねw




 さて、そろそろ総評です。音楽、映像、演出、そしてシナリオの妙、と全ての要素が高レベルで構成されており、同人どころか商業作品と比較しても傑作に類するであろう作品。シナリオ自体は全体的に重苦しく、好みは分かれるでしょうが、その点が許容出来るのであれば間違いなくオススメ出来ます。文句を付ける点が殆ど見当たらなかったというのは、それだけ作品の完成度が高かったということの証左ですね。


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