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チラシの裏に書くようなことを徒然と。 Since 19,Feb,2007
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ハードSFの巨匠・ジェイムズ・P・ホーガンのデビュー作、星を継ぐものです。
最近はミステリーとSFを交互に読む傾向にある私です。



 月面で真紅の宇宙服を着た人間の遺体が発見された。驚くべきことにその年代を調べると約5万年前。チャーリーと名付けられたその人物を巡ってあらゆる分野の専門家を集めた分析が進められる。ヴィクター・ハントは、物質を透過撮影出来る最先端技術であるトライマグニスコープの開発者だったが、チャーリーの研究にトライマグニスコープが導入されると共に彼自身もまた研究チームに参加することとなる。少しずつ解明されていくルナリアンと名付けられたチャーリー達の謎だったが、すべての矛盾を解決する結論が立つことは無かった。

 一方、木星の衛星・ガニメデでは、ルナリアンよりも遥かに過去に作られたと思われる巨大な宇宙船が発見される。ハントや生物学者のダンチェッカーは彼らの痕跡を探る中で、ある一つの結論に至ることとなる。




 あらすじとしてはこんなところでしょうか。傑作と謳われる本作が映像化されていないのは何故なんだろうな、と不思議に思っていたのですが内容を読めば納得ですね。ぶっちゃけて言うと本作は、ビジュアル的には、非常に地味な作品なんですよね。未知との遭遇と言えば聞こえはいいですがやってることはひたすら調査と考察だけであり、物語が大きく展開したりすることはありません。

 それでもこの作品が物凄く面白くて、魅力的なのはやはりベースとなる未知との遭遇を膨大な知識と創造力によって描いたハードSF的な要素と、残された痕跡の調査と科学的な検証によって、少しずつ彼らの歴史を紐解いていくという壮大なミステリー要素が上手く合わさった絶妙なバランスだからでしょうね。


 とはいえ、一般のミステリーと同様に鋭い洞察力があれば答えが判るとは思えません。例えば、チャーリーの日記のミネルヴァと現在の月の距離の矛盾から、ミネルヴァの衛星だった月は、地球の月になったんじゃないか、という推測は出来ます。しかしそういうことが物理的に起こりえるのか否かは天体物理学の知識がないとわからないため、結論とすることは出来ません。あくまでもミステリー的な面白さを持った作品という感じですね。

 ストーリー性というのは乏しく、サイエンス寄りな物語ではありますが、登場する人物も魅力的です。反目しあっていたハントとダンチェッカーが、木星へ向かう船の中でお互いを認め合うシーンなんか、傍から見ればおっさん二人が佇んでいるだけなのに感慨深くて感動してしまいます。






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 本作の作品解説でこの作品こそがセンスオブワンダーだ!と声高に評されていました。センスオブワンダーという言葉は、SF作品の面白さを語る時によく使われますが、その定義は結構曖昧らしいです。SF作品に触れた時に感じる不思議な感覚、というのが一般的な意味みたいですが実に曖昧ですね。

 一方でとあるブログの方がセンスオブワンダーの定義で最も共感できたものは”認識の改革”だと述べていました。この認識の改革という定義であれば、この作品が正にセンスオブワンダーの塊であることに納得出来ます。ずっと追い続けていた謎が解明され、それが自分たちの歴史に繋がる。一つの発見をきっかけに今まで常識とされていた地球の歴史が丸ごと覆される。


 本作は30年前に書かれたものとは言え、今でも十分通用するリアリティを持ってハードSFを構築しています。そのリアリティがまるで私達が人類の謎を解き明かす歴史的瞬間に立ち会っているような、そんな形容し難い感動を与えてくれます。明日にでも月面でチャーリーが発見されるかも知れない。そんな未来を夢想してしまうような興奮を与えて幕を閉じるわけです。


 私の拙い語彙ではこの作品の魅力を伝えきれないのですが、間違いなく面白いと言える作品です。そして、読み易さと普遍的なテーマ性から老若男女関係なく万人にオススメできる作品でもあります。だって月で約5万年前の遺体が発見された、なんて聞いてワクワクしない人はいないでしょう?

 私の少ない読書遍歴の中でもトップクラスに面白く、そしてロマン溢れる愛すべき作品です。


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