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チラシの裏に書くようなことを徒然と。 Since 19,Feb,2007
ゼロ年代を代表する和製SFとして名高い・虐殺器官です。


著者の伊藤氏は、デビュー作である本作発表のわずか2年後に他界してしまったそうです。メタルギアで有名な小島氏の熱狂的なファンとしても有名で、MGS4の小説版を担当し、小島氏を唸らせた程の評価を得たらしいです。こっちもそのうち手を出してみたいですね。



 サラエボが核爆発によってクレーターとなった世界。後進国で内戦と民族衝突、虐殺の嵐が吹き荒れる中、先進諸国は厳格な管理体制を構築しテロの脅威に対抗していた。アメリカ情報軍のクラヴィス・シェパード大尉は、それらの虐殺に潜む米国人ジョン・ポールの影に気付く。なぜジョン・ポールの行く先々で大量殺戮が起きるのか、人々を狂わす虐殺の器官とは何なのか?


以上、Wikiよりあらすじ引用。


 SFとはいっても現代の科学の延長で想像し得る未来が舞台ですね。9.11によって戦争の在り方が変わり、その地続きにある未来。使われてる技術なんかを見るとメタルギアの時代、特にMGS4に近い世界観。PMC(作中ではPMFですが)や、IDタグによる武器管理統制、人工筋肉なんかは、メタルギアファンは想像しやすいと思います。米情報軍でも暗殺を生業とする精鋭集団・特殊検索群i分遺隊に所属するクラヴィス大尉が主人公。この部隊では痛覚マスキングや光学迷彩など最新鋭の技術が使われています。


 文体は、クラヴィス大尉の性格の影響が強いですが軍事サスペンスものらしからぬ繊細な感じで、心理描写が豊富なこともあって、日本らしい小説に感じます。反面、内容自体はバリバリのミリタリーで、そちら方面の描写もディティールに凝っているので、そのギャップが良い、というか不思議な感覚でしたね。


 読み始める前は、「虐殺器官」というタイトルからグロテスク描写が強いハードボイルド小説だと思っていたのですが、実際は、母親の死を選択したというトラウマを抱えた、文学好きのナイーブな青年が、自分の罪と向き合う、という非常にメンタルな内容ですので、タイトルで敬遠してる方は、勿体無いと思います。同時にグロテスクな描写を期待してる人は肩透かしを食うでしょうけども。


 以下ネタバレとなりますので、ご注意をば。






 まず何を置いても、「虐殺器官」というものを想像するに至った感性がすごい。サブリミナル効果のように深層意識に働きかけているんでしょうが、最初のターゲットだった大佐?だかが、何故こんな虐殺が行われるに至ったのか理解出来ないと言っていました。虐殺器官の怖いところは、自分達が知らず知らずのうちに、虐殺を仕方ないと容認するような心理にさせられていることですよね。感情統制されたクラヴィス達のように。



 虐殺器官を利用してアメリカを守ろうとしたジョン・ポールとの邂逅や、自分の罪の理解者になり得る女性・ルツィアを失ったことがエピローグに繋がるわけですが、クラヴィスぐらい繊細な人間だったからこそ、あの結末に至るまで振り切っちゃったんでしょうねえ。ウイリアムズみたいな我々が想像する典型的な米国軍人ならジョン・ポールの戯言に耳を貸す事もなかっただろうに。


 ジョン・ポールを追うミッションの中で、クラヴィス達は、少年兵と幾度と無く交戦します。感情統制された彼らは本来引き金を引くのを躊躇うような幼い子供たちも眉一つ動かさないで殺していくわけですが、
その行為や軍人に感情統制を促すアメリカ政府と、虐殺を誘発させるジョン・ポールは実質的には同じものではないかと問われ、苦悩するクラヴィス。


 愛する母国・アメリカを救うために虐殺文法を研究し、殺戮を振りまいたジョン・ポール。対してクラヴィスは、愛する人間・ひいては地球を救うために、最強の軍事大国であり、戦争の火種であるアメリカに虐殺を招いた訳ですね。結局虐殺器官を活性化する虐殺の文法の詳細は明らかにされませんでしたが、この辺が少し不満だった部分ですかねー。どのみちトンデモ理論であることはわかってるわけですから、虐殺文法のベースはウンタラカンタラ~といった感じでそれっぽい説明を垂れ流して欲しかったところです。




 あと作中では、他作品の小ネタやパロディが多いのがニヤニヤ出来てよろしいですね。映画や著名な小説からの引用が多いのですが、木を隠すなら森というか、その中に結構サブカルネタが入り混じってるのが良いですよねw 引用が多いのが珠に瑕、という評価もあったらしいですが、本当はサブカルネタを入れたかっただけちゃうんかとw フジワラトウフショップとか、ときメモ主題歌とか、骨董品ぶら下げた銀髪の老兵、とかね。



 というわけで、近未来SFでありながら、現代に蔓延する社会的な問題を軍事サスペンスとして落とし込み、ディティールに凝りながらもテーマはシンプルに描いているという面白い作品です。一冊でまとめるには惜しいぐらい内容が詰まってますね。

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