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チラシの裏に書くようなことを徒然と。 Since 19,Feb,2007
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というわけで早速読了しました「灼熱の小早川さん」です。
田中ロミオの最新作。

内容は「AURA」と同じく学園物。人退以外は全部学園モノでいくつもりなんでしょうかね。




人間関係も勉強もそつなくこなし、万事如才ない高校生となった飯嶋直幸。県下でもトップレベルの進学校に入学した彼は、なに不自由ない学園生活を手にした。伝統と自粛のバランス――そんな口当たりのいい雰囲気に突然水を差したのは、クラス代表となった小早川千尋。自ら代表に立候補し、履行の邪魔なので副代表は不要と言いはなった眼鏡女子。常にテンション高め、ガチガチの規律でクラスを混乱に陥れる彼女のその手に、直幸は炎の剣を幻視する。そして彼女の心の闇を知るのだが――。


以上あらすじコピペ。


展開・・・というか構成もAURAと似ていて、そつなくこなせる主人公が、空気を読めないヒロインに心入れしてしまって結果クラスから孤立してしまうという感じ。

学校生活特有のあまり表に出てこないような「あるある」をふんだんに取り入れてリアリティを醸し出しながらも、やっぱりこんな奴いないよなという登場人物達。この辺りの微妙な表現はライトノベルでしか見れないロミオ節だなーと改めて思いますね。現実だったら皆もうちょっと馬鹿だし口に出して言わないよなーとか自分の学校生活を振り返って思い耽りました。

日常会話のテンポは相変わらず良好。AURA同じく他ロミオ作品よりはソフトなタッチだと思いますけどね。


で、内容ですが、読後感は悪くないものの少し拍子抜けで、AURAのようなカタルシスはありません。せめて小早川さんの鮮やかな論破をひたすらクドく表現してくれればなあーw 一つ一つの場面がブツ切りでダイジェスト的に話が展開していってあまり感情移入出来なかったのはちょっとありますね。あともうちょっとイチャイチャしても良いんじゃないのかしら。

灼熱の剣についても飯島くんのような観察眼を持った人間だけが幻視するその人間を取り巻くオーラ的なものを比喩したものだったわけですが、タイトルに入れるほどの重要な伏線というわけでもなく、炎の剣と氷の剣でお揃いだね!で終わってしまっている気がしました。

飯島くんを取り巻く状況が変わっていく様や小早川さんとのやりとり、そしてV3.0へと変わっていく飯島くんなど全体的な流れは良く纏まっていて素直に面白いと言える作品ではあったのですが、AURA程のインパクトが無かったかなーというのが正直な印象。

しかし1巻完結で手軽に読めて面白いラノベって希少だと思いますので、ロミオ信者は間違いなく買いだし、一般の方にもオススメ出来る作品だと思います。

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新本格ミステリーの祖ともされる島田荘司氏の鮮烈なるデビュー作・「占星術殺人事件」です。我孫子武丸や綾辻行人のペンネームを考えたり、新本格のゴッドファーザーと称されることもあるとかwikiに書いてありましたねw

30年も前の作品ですが、あまりにも有名な作品ですので、今さらながらに読んでみました。





1936年に猟奇的な連続殺人事件が起きた。画家の梅沢平吉が密室状態で殺された。その後、平吉の6人の娘達も全員殺され、死体の一部分を切り取られた状態で日本各地で発見された。それは平吉が残した占星術に基づいた「アゾート」作製に関する内容に合致する状況だった。それから40年後の1979年、占星術師の御手洗潔は親友の石岡から今でも迷宮入りのままである「占星術殺人事件」のあらましを聞き、調査を始めることになる。

概要としてはこんな感じ。冒頭、梅沢平吉が残したとされるアゾート作製のための占星術の薀蓄が延々と語られるため正直取っ付きにくいです。しかし探偵役である御手洗潔は相当の変わり者であるものの、なんとなく憎めなくて魅力的なキャラクターですので、平吉の遺書を我慢すれば後はすんなり読めると思います。石岡とのシャーロック・ホームズについての議論はなんか微笑ましいしw


内容ですが、諸事情によって素直に楽しめなかった部分があったのが非常に残念でしたが、時代背景や細やかな設定を含めて完成度が高い作品だなと感じましたね。


以下、本書と某有名探偵漫画のネタバレですのでご注意をば。

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道尾秀介著のラットマンです。


「このミス」にも名を連ねる作家さんですが、この作品を選んだ理由はなんとなくだった気がします。タイトルからどのような物語なのか全く想像出来なかったのが逆に興味を沸かせたのかも知れません。

で、このタイトル・ラットマンですが、これは一種の騙し絵のことを指しています。老若男女の顔と並べるとおじさんの顔に見え、犬などの動物の絵と並べるとねずみに見えるという錯視を利用したものですね。作中でも説明がありますが、この現象を引き起こす「合理化」という心理的な作用が本作の全てといっても過言ではありません。


主人公の姫川亮はアマチュアバンド「sundowner」のギタリスト。同級生と14年間続けてきたバンドだが、ドラマーだけは恋人のひかりからその妹の桂に2年前に交代していた。幼い頃に父と姉を亡くした過去を持つ姫川は心に陰を残したままだった。そんな中、ひかりが死んでしまう事故が起きる。本当に事故なのか、それとも事件なのか。そしてその事故をきっかけとして姫川の過去の真実が明らかになっていく。


といった感じのあらすじでしょうか。

内容は一応ミステリに属するのでしょうが、一般的な殺人事件が起こってアリバイのトリックを破って真犯人を捕まえるといったようなものではありません。人間の心理を匠に操り、読者からは真実が二転三転しているように見えるという、独特なスタイルです。ここは好みの分かれるところだとは思いますが、こういった作風もあるのだという意味でも一読する価値がある作品だと思いました。もちろん個人的には読んでいて非常に楽しめた作品ですし。




以下はネタバレになりますのでご注意を。

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京極夏彦氏のデビュー作であり妖怪シリーズの第1作、姑獲鳥(うぶめ)の夏です。
メフィスト賞0回受賞作とも称されるメフィスト賞を創設した作品でもある、色々とすごい作品です。この文量と内容の作品が初めて書いた小説だとか俄に信じられないのは無理ないですよね、本当にw


三文作家の関口巽は、友人で古本屋「京極堂」を営んでいる中禅寺秋彦を訪ねる。関口は京極堂に、巷で噂になっているとある医者一家の二十箇月の間子供を身篭っている妊婦の話を持ちかける。夫は1年前に行方不明、家に伝わる憑きもの筋の呪い、連続発生した嬰児死亡事件の疑惑。数々の不可思議な謂れを抱える久遠寺家。超能力探偵・榎木津や京極堂の妹・中禅寺敦子らも巻き込み関口は久遠寺家に関わっていくのだった。

あらすじとしてはこんな感じ。主人公の関口は、語り部として読者と同じ視点を持つ人物。博識な京極堂の語る難解で荒唐無稽な理論や榎木津の破天荒な言動に右往左往する一般人ですね。


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犬村小六著・とある飛空士への追憶です。

既に続編のとある飛空士への恋歌も完結しているらしいですが、いまさら読んでみました。どうも口コミで人気が広がった作品らしいですね。今秋映画化の予定らしいです。

中央海を挟んだ2つの国、神聖レヴァーム皇国と帝政天ツ上は、戦争状態にあった。天ツ上領内に位置するレヴァーム自治区を支配する貴族、デル・モラル家は天ツ上の空挺部隊に強襲される。レヴァーム皇国皇子の許嫁であり、次期皇女のデル・モラル家長女・ファナ・デル・モラルを奪還するため、デル・モラル空挺騎士団の狩乃シャルルは中央海を単身翔破し、本国へ次期皇女を送り届けるという任務を命じられる。身分違いの二人は12000kmの空旅の中で惹かれ合い、心を寄せていく。

といったようなあらすじ。著者曰く、ローマの休日+ラピュタみたいな話を書きたかったとのことですね。物語としては王道的で、展開に驚かされるようなこともない作品。・・・なのですが、プロットも綺麗だし、シャルルとファナが心を寄せ合っていく経緯も丁寧だし、ラストのシャルルの演舞のシーンなんて正に圧巻。切ないラブストーリーなのですが、読了後に爽快感を得られるとても美しい作品だったと思います。

映画は絶対みたいですね!読んでる時に脳内でここ動画で見てみたいなーとか何度も思いましたしw 千々石との一騎打ちとか戦闘機モノとしての描写も手に汗握る展開で退屈しませんでしたね。




以下ネタバレ。




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桜坂洋著・「All you need is kill」です。
面白いラノベみたいな紹介でよく名が挙がっていた作品です。どこかでループものということだけは耳にしていました。

舞台は近未来の日本。人類が謎の侵略者・ギタイとの生存戦争を強いられている世界。主人公のキリヤ・ケイジは統合防疫軍に入隊したばかりの新兵。しかし初出撃となった戦場でギタイと相討ちになり死亡する。意識が戻ったとき、そこは出撃の前日だった。この時からキリヤは時のループ現象に巻き込まれ、幾度と無くギタイとの戦闘を繰り返すことになる。

こんな感じのあらすじですね。文体や雰囲気はキリヤの成長に合わせて厳しくなっていく感じが出ていました。あとラノベレーベルだからかも知れませんが、すごく読みやすい部類ですね。

ループものは古典SFから近年ではラノベとかにも幅広く使われているネタですが、ループと戦争を合わせた作品って意外と少ない印象がありました。パッと思いついたところでマブラヴオルタやスマガでした。ちょうど足して2で割ったような内容でしょうか。マブラヴはループ現象そのものが作品の軸ではないですし、スマガは主人公が戦うことが軸ではないので。むしろガンパレが一番近いのかも知れない。


以下ネタバレ感想です。

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伊坂幸太郎著のアヒルと鴨のコインロッカーです。
吉川英治文学新人賞受賞作でかつこのミステリーがすごい!でも上位に選ばれていましたね。知り合いから本作の映画版が面白かったという話を聞いて、ちょうど伊坂幸太郎の著書のどれかを崩そうとしていた所だったため、読むことにしました。

本作は、主に現在と二年前の物語が交互に語られます。
大学の新入生の椎名が引越し先のアパートの住人である河崎という青年に誘われ、書店を襲う計画に巻き込まれる話。そして2年前のペットショップで働く女性・琴美とその恋人でブータン人のキンレィ・ドルジが世間を騒がせているペット惨殺事件の犯人達と遭遇する話。この二つの物語がそれぞれ展開し、次第につながっていく。

あらすじはこんな感じです。文体は穏やかで、登場人物達の考え方や、会話は文系でユーモラスな感じですね。河崎に常に喧嘩腰な琴美が面白いw ドルジも河崎の肩を持つし、口が達者な河崎に毎回言い負かされ気味。

犯人達のペット惨殺の描写とかが結構エグいので、苦手な方は注意した方がいいかも知れません。私もペットを遊び半分に殺すのとかはすごく苦手なので少し目を背けたくなりました。


以下ネタバレです。











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舞城王太郎著の煙か土か食い物です。メフィスト賞受賞作。

アメリカで天才外科医として活躍している奈津川四郎の元に、母親が暴行され重体との知らせが入る。
故郷・西暁町に戻った四郎は犯人への復讐のため、事件の解明を目指す。

といった内容です。あらすじからは破天荒なミステリなのかな?となんとなく予想していたのですが、ミステリ要素はあるものの、それほど重要視されていないのですよね。主人公も天才的な発想と知識で真犯人に迫っていくのですが、そんなものはくだらないと彼自身がバッサリ切り捨てています。

今まで読んだ作家の中でも特に好みが分かれる文体だと思います。なんというかすごいロックな感じw よく舞城氏の文体の評価として「圧倒的な文圧」「スピード感溢れる」とか言われてますが、正にそう。口読点も改行も少ないので読みづらいと思いがちですが、何故かすんなりとそのスピード感に乗れるという結構新しい感覚です。変にカッコ付けた比喩や体言止めがないのがスピード感を損なわない理由なんでしょう。

また作中では暴力的な描写がかなり多いです。四郎は非常に好戦的で歯に衣着せぬ物言いで、終始前へ前へと突き進むような性格ですし、奈津川家の他の兄弟・特に二郎は四郎を全てにおいて上回るような天才で破天荒な人物ですし、父親の丸雄は全身傷だらけで二郎に執拗な暴力を振るう。すごい家庭環境ですw 回想での二郎の同級生への復讐描写なんかかなりエグい。この辺りダメな人はダメでしょうね。




こんな互いに憎しみあって時には殴り合う酷い環境の家族をメインに据えた物語でありながら、最後には家族の絆みたいなものにちょっと感動させられてしまうという、なんだか小憎らしい作品でした。

「でも結局家族は生きてるうちに、そして死んでからも引きつけあうのだ。(中略)万有引力と同じくそもそも逃れられない力なのだ。それが家族のお互いを引きつけあう力だ。家族として発生した以上とどめようのない力だ。」

タイトルの煙か土か食い物とは人間は結局死んだら焼かれて煙になるか、埋葬されて土になるか、放置され獣の食い物になる、生きてる価値なんてないという意味でした。四郎の言葉はそれへの一つの答えなんでしょうかね。

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歌野晶午著・「葉桜の季節に君を想うということ」です。
2004年のあらゆるミステリーの賞を総なめにしたと言われる今作品です。

何でも屋ならぬ何でもやってやろう屋を自称する成瀬将虎(トラ)は、後輩のキヨシから相談事を受ける。それは老人を食いものにする悪徳業者・蓬莱倶楽部の悪事の証拠を掴むことだった。あくる日将虎は電車で自殺しようとする女性と助ける。彼女の名は麻倉さくら。互いに恋に落ちていく二人だったが・・・。

といった内容。プロットとしては大まかに三つのストーリーが展開していきますね。トラが蓬莱倶楽部の悪事を暴くためにあれこれと動く話、トラの私立探偵時代にヤクザの構成員として潜入する話、トラの飲み友達であった安藤士郎の娘を探す話。

ネタバレが非常に怖い作品のため、本書を読む際は情報を一切シャットアウトするのが望ましいですね。そして読了後にタイトルのなんと美しいことに気付くはずです。





以下ネタバレですので、未読の方は注意を。


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桜庭一樹著、砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないです。

GOSICKシリーズで有名ですが元々ゲームのライターさんだったみたいですね。その後ラノベ、一般文学と渡ってきた稀有な経歴の方。その出世作ともなったのがこの作品らしいです。本作自体も最初はラノベレーベルで出版された後、じわじわと人気が広がり一般文庫として再発行されたという経緯を持っています。

引き篭もりの兄を抱える複雑な家庭事情から不相応なリアリズムを持った主人公・山田なぎさ。彼女が在籍するクラスに転入生がやってきた。名前は海野藻屑。そのあり得ないような名前や田舎の少女とは違うあか抜けた外見、そして奇天烈な言動に早速色眼鏡で見られる彼女だったが、何故かクラスで唯一自分に無関心だった主人公に執着する。

粗筋としてはこんな感じ。200ページ程の薄い本なので、すぐに読めてしまいますね。

物語の内容はポップな青春小説の文体を取りながらもひたすらに暗い。そして救われないお話です。とても万人にお勧め出来る作品ではない・・・のですが何故か多くの人に読んでもらいたいと思ってしまう不思議な作品です。




以下完全にネタバレ。


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殊能将之著、ハサミ男です。着実にメフィスト賞受賞作を崩しにかかってる感じですw

世間を騒がせている少女をハサミを使って惨殺する猟奇殺人事件。その犯人であるハサミ男は、3人目のターゲットである樽宮由紀子を殺害するため機会を伺っていたが、ターゲットは何者かに殺され、ハサミ男は死体の第1発見者となってしまう。殺害方法は自身の模倣犯ととれる銀色のハサミによる刺殺。ハサミ男は事の真相を探るため自ら調査を始めるのだった。

といったあらすじ。

読み口はそれほど堅苦しくなく、読みやすい部類に入ると思います。楽しみための予備知識も要らない感じ。ただ医師の引用癖や、ハサミ男のシニカルな口調は少し好みが分かれるかも知れません。殺人犯が別の殺人犯を捜査するという倒叙ミステリっぽくてそうではないミステリ。ミステリ慣れしてる方なら真犯人とこの作品を貫く一本の太い伏線が推理出来るでしょうね。私は真犯人については推理というか予想はついていましたが、伏線の方には全く気が付かず、あの一言を聞いた瞬間思わず読み返してしまいました。

ミステリとして、サスペンスとして非常に面白い読み物でした。
 

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いささか手を出すのが遅すぎた感がありますが、化物語の大ヒットで一躍時の人にもなった西尾維新氏のデビュー作かつメフィスト賞受作であるクビキリサイクルです。これは戯言シリーズの第1章らしいです。余談ですが、先の感想の森博嗣「すべてがFになる」は第1回メフィスト賞受賞作品だったんですねえ。

私の創作物を楽しむスタイルとして基本的に最初の作品から、というのが前提でありますので、氏についても同様でやはりデビュー作から攻めようと考えたわけです。しかし真っ当(?)なミステリーものだったとは驚きです。西尾氏というと戯言シリーズも有名だとは思いますが、やはり化物語とか漫画の原作として耳にすることが多かったため、まさかミステリー作家だったとは思いもしませんでした。・・・とはいったものの私自身は化物語を見たことがないから知らないだけで、実は中身はミステリーだったりするんだろうか。


前置きはこのくらいにしてクビキリサイクル。あらすじとしては、大財閥の令嬢・赤神イリアの招待を受け、絶海の孤島へ向かう天才技術者玖渚友とその友人である主人公(ぼく)。鴉の濡れ羽島と名付けられたその島は様々な才能に特化した天才が集まる島だった。そこで主人公と友は残虐な首斬り殺人に遭遇する・・・。といった内容。

絶海の孤島、密室殺人と古典的なミステリーの要素を持ちつつ、島に男は主人公ともう一人しかおらず、他は全員美少女と美女といういかにも現代チックなラノベ的要素もある、というある意味珍しい作品です。設定だけでなく文章自体もいわゆるサブカルネタが豊富で、作品通しての読み口は完全にラノベのそれと一致します。まあ本のパッケージ自体もラノベっぽいし、そこで詐欺だ!真面目な本格ミステリが読みたかったのに!とかはならないでしょう。西村京太郎の隣に西尾維新の著書があるとかなり違和感を感じますけどねw

以下ネタバレ感想となります。

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氏の中でも特に人気があるS&Mシリーズの第1作「すべてがFになる」です。理系ミステリと称されるように、作中は登場人物の殆どが理系で、内容やトリック自体もコンピューターやプログラミングに関することが多々登場します。

N大学の助教授である犀川創平と教え子かつ恩氏の娘でもある西之園萌絵は、研究室の旅行で妃真加島を訪れる。妃真加島には最新鋭の設備とセキュリティを持つ真賀田研究所があり、二人はそこで不可思議な密室殺人事件に遭遇する。

といった感じの内容です。初めて森博嗣氏の作品に触れた所感としては、専門的な内容の割には読み易く、登場人物も個性的で飽きさせない魅力を持っているな、と感じました。主人公の犀川は独自の理念を持った天才ですが穏やかな性格。しかしシナリオの終盤になると狂気的な側面も垣間見せたりで中々魅力的です。ヒロイン役の萌絵も犀川に好意を抱いていて作中で何度かヤキモチを焼いていたりと可愛いキャラなのですが、実は数学の天才。そしてその二人の天才を凌駕する天才である真賀田四季博士、と中々厨二チックで私好みですw

これから本作を読もうと思っている方は本作の情報は一切遮断した方が良いです。すべてがFになるのウィキペディアの概略でさえもネタバレになっちゃいますのでw真賀田研究所ではオリジナルの超すごいオペレーションシステム・レッドマジックが可動していたり、ロボットによる管理、VRゲームの実現など、作品発表の1996年当時としては正に最新の理系知識を取り入れた斬新なミステリだったんでしょうね。十数年立った今から考えてもハイテク研究所と言えますし。ただ当時よりはコンピュータ用語も一般的に浸透していますので、現在の方が自然に読めるかも知れません。

関係ないですけどレミリアの「レッドマジック」は本作が元ネタという説もありますねw



以下ネタバレの感想です。


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映画版がDVD/BD化されたのもあって、映画視聴と合わせて原作小説も一気に読んでみました。せっかくなので双方比較しながら感想をば。

6つの章で語られる6つの告白。愛娘を殺された女性教師が、クラスメイトの中に犯人が居る、と告白する第1章「聖職者」。小説も映画も双方この「聖職者」が鮮烈な印象を残します。小説では、全てが女性教師・森口のセリフだけで構成されています。心理描写も情景描写も皆無で、森口がただ淡々と語っていくだけなのですが、愛娘を殺された無念、悲嘆、憎悪といった感情がひしひしと伝わってきます。映画版でも松たかこが森口役を演じていますがこれが上手い。感情を込めず、静かに語り続ける口調の中に込められた怒りみたいなものを感じます。

聖職者という短編で、評価された作品でもあったそうでそれも納得の出来ですね。


以下、原作小説・映画版双方のネタバレとなります。

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様々な賞に選ばれ、映画化までされた非常に有名な作品ですが今まで読んだことはありませんでした。ドラマの原作としてよく耳にする東野圭吾氏ですが、色々なジャンルの作品が書ける人なんですねえ。本作もドラマのガリレオは数話見たことはありましたが、映画版は見ていません。

初めて氏の小説を読んだ感想としては、キャラクターの性格によるものなんですが、数学や物理、論理的な思考に基づいた文章ではあるものの、意外に読み易く一気読みしてしまうタイプの作品だと思いましたね。他の作品が同様かはわかりませんが、少なくとも本作に限っては起承転結もしっかりしていて序盤に貼った伏線も綺麗に回収しており、一作品として完成度が非常に高いなあと感じました。

あらすじとしては、天才的な頭脳を持った数学教師・石神は好意を抱いている隣人の母娘が元夫を誤って殺してしまったことを知ってしまう。石神は母娘を救うため、その頭脳を使って警察の目を欺く計画を立てる。一方警察では、捜査一課の草薙が物理助教授で同じく天才的な頭脳を持っている湯川に助言を求めていた。しかし湯川と石神は同級生であり唯一互いを認め合った友人だった。

といった感じ。最初から犯人が分かっている刑事コロンボとかのハウダニットを考えるタイプの推理小説ですね。天才対天才というガリレオシリーズでも屈指の人気作らしいです。



では、以下ネタバレ感想です。

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